■浦和 E

 新加入選手は高卒の武田英寿(←青森山田高)とJ2得点王のレオナルド(←新潟)、そして直前にオーストラリアU-23代表のトーマス・デン(メルボルン・ビクトリー)を獲得したのみ。大分からレンタルバックの伊藤涼太郎を合わせても4人だった。それが強化部の意図したものなら問題ないが、情報によれば何件か希望が叶わなかった結果のようだ。

 ただし、新たに取り組んでいる4ー4ー2を高めていく戦力は備えている。不安要素があるのはボランチと左右のサイドバック。ボランチは4ー4ー2をハイレベルに機能させるための生命線であり、エヴェルトン、青木拓矢、阿部勇樹、柏木陽介と実力者はいるものの、上位を狙う意味で心もとない。

 右サイドバックに関してはデンの起用法がどうなるか。東京五輪行きを決めたAFC U-23選手権で右サイドバックとして奮闘したが、センターバックが本職の選手だ。基本的にセンターバックでもテストされている橋岡大樹が右サイドバックのファーストチョイスで、ボランチが本職の柴戸海も選択肢となる。デンはチームにフィットさせながら、センターバックとサイドバックの両ポジションで起用を見極めていく流れか。

 興梠慎三とレオナルドという二人で30得点は狙える2トップと左右のサイドハーフは充実しているだけに、ボランチとサイドバックがどうベースを作って行けるかが躍進の鍵になりそうだ。

■FC東京 C

 2位に終わった昨シーズンから悲願の優勝を果たすために、長谷川健太監督は得点力のアップをテーマに掲げ、堅守速攻をベースとした4ー4ー2から前線の破壊力を押し出す4ー3ー3にシフトすることを決断した。アダイウトン(←磐田)、レアンドロ(←鹿島)はその目的に完全にマッチしたタレントであり、Jリーグでの経験が豊富にあることから、ディフェンス面でも計算が立ちやすい。

 ただ、シーズンを考えれば外国人3人に頼るばかりでなく、ケガから回復途上の日本代表FW永井謙佑はもちろん、U-23日本代表のFW田川亨介、J3得点王の原大智、韓国代表ナ・サンホといった選手たちの突き上げも大事になる。

 中盤では大学サッカーで注目を集めたアカデミー出身の安部柊斗(←明治大)がACLプレーオフ、さらにACL本戦の蔚山現代戦でも先発フル出場を果たし、攻守に渡る活躍により、そのままレギュラーポジションを掴む可能性も出てきた。さらに大卒ルーキーのMF紺野和也(←法政大)、DF中村帆高(←明治大)も今年のうちにブレイクしてもおかしくないタレントだが、攻撃的なスタイルを支えるバックラインとしては後ろの戦力が少し心もとない部分もある。

 しばらくは前線と中盤の頑張りである程度は耐えられるはずだが、東京五輪による中断期間を前に補強があってもおかしくない。日本代表の長友佑都の復帰も噂される左サイドバックは小川諒也の奮起も期待されるが、アカデミーから昇格したU-19日本代表のバングーナガンデ佳史扶が台頭してきたら面白い。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才能”」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行。