また、水際対策としてクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号の乗員乗客3711名が14日間も船内に拘束させる検疫や、武漢からの政府チャーター機による帰国者のホテルでの隔離、さらにはサーモグラフィーでの熱の感知や症状を申告することによる空港での検疫が行われていますが、無症状の新型コロナウイルス感染の報告や潜伏期間、さらには日本国内での3次感染の可能性が示唆されている中で行っても無意味であると言わざるを得ません。そもそも、水際対策は国内で感染が広がっていないのが前提で行うべきなのですから。
タイから日本に観光に来ていた夫婦のうち、妻が日本滞在中に体調不良を訴え、夫はタイ帰国後に症状が出たとも報じられています。横浜に接岸しているクルーズ船でも、感染者は検査した延べ336人中70人となっていますが、クルーズ船のような密室空間では急速に広がることを考えると、2週間の船内拘束でさらなる感染者数の増加はやむを得ないでしょう。
インフルエンザ検査は陰性であった人の中には、新型コロナウイルス感染症である人がきっといるのだろうなと思いながら、私自身日々診療しているというのが本音です。日本では湖北省に関係のある人しか検査を受けることができないため、新型コロナウイルス感染者の実際の数を把握できていないだけで、国内感染は確認されているよりずっと広がっていると思っています。
米テンプル大学医学校のマーゴット・サボイ医師は、「私たちは未知のものを恐れ、新しい新興の感染症についての情報を求める。何が真の脅威で、何がそうでないのか、私たちはすぐには判断できない。だから、必要のないパニックを起こすことがある」と指摘しているように、日々刻々と事態が変化していく中、今、私たちができることは、体力の維持、栄養や睡眠をしっかりとる、免疫の低下を防ぐ、そして手洗いです。新型コロナウイルスは、基本的には風邪のウイルスですから、風邪やインフルエンザに対する予防法が最も大切となるのです。