北海道ローカルの番組でありながら、全国区の人気を誇る『水曜どうでしょう』。昨年クリスマスに北海道限定で6本目の新作が放送された直後、番組の名物ディレクター・藤村Dこと藤村忠寿さんがエッセイ集『笑ってる場合かヒゲ~水曜どうでしょう的思考』(朝日新聞出版)を発表。「面白い!」「深い」「励まされた」という声が続出の第1巻に続き、第2巻が2月8日に発売された。そんな藤村さんに「水曜どうでしょう的思考」とは? 仕事観とは? を直撃した。
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■うまくいきそうもなかったら「ちょっとだけ方向性を変える」
――以前のインタビューでも「我々が追っているのは人間の姿」だとおっしゃってましたが、毎回面白いことが起きる保証はどこにもない。プレッシャーはありませんでしたか?
むしろプレッシャーしかありませんよ(笑)。「面白くできなかったらどうしよう」。ロケに向かう車内では、みんな無口です。「どうでしょう」はある意味ドキュメンタリーですから、やり直しも撮り直しも一切なし。ただただ撮り続けて、そのまんまを編集して流す。でも、ヨーロッパくんだりまで行って、一日何にも起こらなかったなんて日もあるわけです。さあどうするか。さすがに全員不安になります。それでムンクの「叫び」の人形をみつけて「劇をやってみよう」とか。「物まねやってくれ!」とか。こいつら、ヨーロッパまで来てなにしてんの? 大丈夫?っていう。それが笑いにつながるんです。劇や物まねが面白くなくたっていい。必死になってる姿が滑稽であれば、十分価値はあります。
テレビ的には、ロケまでして一日撮影したのに何もなかったなんて“失敗”の部類です。それがそれまでの“常識”でもある。でもね、常識を打ち破る、なんていうたいそうなことじゃなくても、ちょっと考え方を変えるだけでいいんです。面白いことが起きない、その「面白くなさ」に嫌気がさした大泉さんや俺が文句を言う。そのやり取りがおかしくて笑える。だったらそれでいいじゃんってことです。
どんな企画も「このままいくと成果出ないな」と思ったら、ちょっとだけ方向性を変えてみる。「対決列島(列島縦断しながら各県の銘菓の早食い競争をする企画)」でも、本当は絶対俺が勝つ!って思ってたのに、出発地点でいきなり負けちゃった。そこから先は「どうやってズルしようか」ってそればっかり。「朝からあいつに水ようかん食わせとけば負けてくれるんじゃねーか?」とかね(笑)。もはやお互い嫌がらせをし合ってるだけの企画になっちゃって。でも、結果が面白ければ「それでいい」んです。