それに対して高梨は、コーチも務める父親の寛也さんが「ジャンプはまとまってきた」と言う状態。高梨も「まだ自分のジャンプを模索しながら飛んでいる状態なので、テイクオフの時に迷いがあるというか、探りながら立っている感覚はぬぐえない。もう少しインパクトのある踏切が出来ればいいのかなと思うけど、そこはもうちょっと本数を飛んで自分のものにしていかなければいけないと思います。まずは形から上手くまとめていかないと力を伝えられなくなってしまうので、そのあたりはコーチと話し合いながら固めていきたいと思います」と話す。

 まだテイクオフの時に自信を持って踏み切ることが出来ていない分、インパクトを与え切れず飛び出すため、空中に出てからもスキーが不安定になっているとも分析する。それが飛型点にも影響している。助走の滑り方テイクオフまではだいぶ固まってきた部分もあるが、そこから力強いジャンプにするために、踏み切るときの力を伝える方向性など、微妙な部分の修正に今取り組んでいるところだ。

 そんな高梨は日本シリーズを終えた後の1月25日からのルーマニア・ルシュノヴ大会の初日では、2本とも向かい風の中のジャンプになったが「今年のスキーは追い風や無風の時はいいが、向かい風の時はうまく浮力を捕まえ切れていないというか、このスキーを最大限利用するまで操れていないと思う」と言うように4位に終わった。

 さらに第2戦は風の向きが微妙に変わる1本目には弱い追い風の中で、空中で少し前に突っ込んでしまい87メートルで21位の滑り出しになった。だが2本目はほぼ同じ条件の中でも飛び出しから空中をうまく修正して92メートルを飛び、全体4位の得点を出して合計では9位にジャンプアップと意地を見せた。

 そのジャンプは2位のピンケルニッヒと3位のヘルツェルには1メートル差。ただ本人がまだ力強さがないというように飛型点ではヘルツェルに1・5点、ピンケルニッヒには3点負けているが、少しずつ迫ってきているのは確かだ。

 この大会ではドイツのアルトハウスが第1戦で2位になり、ザイファルトも第2戦で4位と復調気配を見せている。かつての鋭い飛び出しに、力強さを加える踏み切りへの修正に務める高梨。自分を「天才ではない」と言う彼女は一歩一歩の向上を目指しながら、女子ジャンプのレベルが上がってきた状況を楽しみながら戦っている。(文・折山淑美)

[AERA最新号はこちら]