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50年に及ぶ格闘人生を終え、ようやく手にした「何もしない毎日」に喜んでいたのも束の間、突然患った大病を乗り越えて、カムバックを果たした天龍源一郎さん。今年に迎える70歳という節目の年に向けて、いま天龍さんが伝えたいこととは? 今回は2月2日間近に迫った70歳の誕生日「古希」をテーマに、飄々と明るく、つれづれに語ります。
【「天龍さん、30歳の誕生日が2回あったって?どうして?」】
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古希の誕生日はやってほしくない。どうしてかって? 60歳の還暦の誕生日に「みんなで中華料理を食べよう」って言われて行ったんだよ。そうしたら、「おめでとー!!!」ってみんなで拍手して20人くらい席についているから、俺が「なんだよっ?」って聞いたら「還暦の誕生日です」だって。俺、頭、きてね、「帰るっ!」って(笑)。「誰もやってくれなんて言った覚えはねーよ!帰るっ!」って怒鳴ってさ。それくらい頭にきたんだよ 。
いや、サプライズのつもりなんだろうけど、「みんなでご飯食べに行こう」って言われたのに嘘つきやがって。「これはなんなんだよって!」って、「このヤローおまえら俺をだましやがって!帰るって!」言い出したから、女房に「まぁまぁいいじゃない」って抑えられたね(笑)。
だから、今回、古希のお祝いをやってくれるって言われて、最初は「いいよ」って断ったんだよ。でも、うちの娘が骨を折っていろいろ準備しくれて、振り返れば自分の周りには早く亡くなった人もいるし、そんなことを思ったら、相撲とプロレスしかやっていない俺を祝ってくれるなんて、有り難いし儲けモンだなって思えた。
サプライズの誕生日の祝いは全然喜ばないで平気で席を立つけど、相撲時代のときの誕生日ってほとんど覚えていないんだよね。あのころ貴乃花が、いまの若貴のお父さんがね、同じ干支の生まれで、俺が2月の誕生日で18歳、19歳になると、あいつも18歳、19歳になる。なのにアイツは十両で、幕内に上がっていって、俺とは雲泥の差がついていった。俺には相撲の素質がないのかなっていつも打ちひしがれていた。彼はどんどんランクアップして出世していくし、俺は相変わらず幕下で足踏みして、とどまっている。当時は、なんか、俺、暗い顔していたよ(笑)。すごく羨ましいっていうか、同じ生まれ年の貴乃花がいることで、自分を卑下する気持ちが湧いたというのが誕生日の思い出だな。