今年10月で32歳になる年齢を考えると、坂本以上にメジャー移籍実現は難しくなるのが確実。そのため3年契約の最終年だった今年からあらためて7年契約を締結した。本人は「これも運命」とFA権取得がずれ込んだ影響を認めつつ、メジャー移籍を断念する意向を示した。

 いちファンとして彼らがメジャーで活躍する姿を見てみたかったという思いがある一方で、もろもろのリスクや所属球団への思いなどを飲み込んで日本でのプレーを続ける決断を下したことが腑に落ちる部分もある。

 ただ気になるのは、坂本や柳田ほどのスター選手が、あえて意地悪な言い方をすれば「現実に屈して夢を断念した」ことで、今後のメジャー移籍に及び腰になる選手たちが増えるのではないかということ。

 結論から言ってしまえば、余計なお世話ではある。どういう道を選ぼうが、究極的には本人たちが納得して現役生活をまっとうできればそれがなによりだろう。

 かつては川崎宗則がソフトバンクで不動だったレギュラーの座を捨て、マリナーズとマイナー契約を結んでメジャーデビューを果たした。一方でポスティングからアスレチックスへの入団を果果たしたものの、メジャー昇格を果たせなかった中島宏之の例もある。今オフの菊池も結果的にはメジャー移籍に失敗して広島残留となったが、挑戦自体は責められることではない。

 今後は坂本や柳田のようにメジャーには挑戦せずに日本で現役をまっとうして名声や実利を守ろうという選手が増えるかもしれない。それもまたよしだろう。ファンとしては、選手たちがどんな選択をしてどんな結果になろうとも、彼らがユニホームを脱ぐときに「ありがとう、おつかれさまでした」と言うだけだ。

 差し当たっては今季終了後のポスティング、あるいは来年オフの海外FA権でのメジャー移籍が噂される山田哲人(ヤクルト)の去就に注目したい。もし山田が坂本や柳田に続いて「生涯NPB宣言」するようならば、スター選手はメジャー挑戦が当たり前という風潮が過去のものになるかもしれない。(文・杉山貴宏)

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