日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は、女性に症状が目立つ「旅行者下痢症」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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東京出入国在留管理局成田空港支局は、成田空港の2019年12月27日から2020年1月5日までの出入国者数が103万430人と、前年度より8・1%増加したとの報告を出しました。今回の年末年始は最長9連休をとりやすかったため、例年よりも海外旅行を選択する人が多かったことや格安航空会社による増便が、出入国者数の増加につながった可能性があるそうです。
正月三が日を終えたと思ったら、あっという間に1月も折り返しを迎えましたが、皆様は年末年始をいかが過ごされたでしょうか。
私は、まさに新しい年を迎えようとしていた1時間前に急激な胃痛と下痢に襲われ、ジャカルタのジョグジャカルタという街のホテルのベッドで横になっているうちに、新年を迎えてしまいました。部屋の窓越しに、花火の音や新年を祝う歓声を聞きながら、胃痛に耐えるという年越しは、しばらく忘れられそうにありません。
下痢は下痢でも、特に東南アジアや中南米、アフリカなど衛生設備の普及が遅れている国々へ旅行した際に、到着してから3日から5日のうちに発症し、1日から5日ほど続く下痢症のことを「旅行者下痢症」といいます。
そこで今回は、自身の経験談を交えつつ、「旅行者下痢症」についてお話したいと思います。
旅行者下痢症は、資源の豊富な地域から資源の限られた地域に旅行する際に、よく見られる病気の一つです。コネチカット大学医学部のHill DR氏が、旅行者784人に対して2年間の追跡調査を行った結果、下痢は最も一般的であり、46%で発生したと報告しています。
24時間以内に4回以上の下痢、もしくは8時間以内に3回以上の下痢に加えて、嘔気や嘔吐、けいれんや発熱、便意や腹痛などを伴う下痢症が「旅行者下痢症」であると定義されています。