

「オレッチが欠場している間にデスマッチ界が廃れて欲しい。戦列復帰してすごいことやったら、またオレッチが一番になれるからよ」
プロレスリング・フリーダムズ所属『デスマッチのカリスマ』と呼ばれる葛西純。
何針縫ったかわからない全身は傷だらけ。試合終了後、顔中に流れる血を拭きながら胸を張って答えてくれた。そこにはデスマッチへの熱い思いがあった。
プロレスと一言で括られるが、いくつもの系統がある。
徹底的に鍛え上げられた肉体を駆使した、俗に言う『純プロレス』。打撃、関節技などを主流とした、かつて『U系』と呼ばれた流れ。映像などを駆使した『エンタメ』など、見る方の趣味趣向に合わせて多種多様なものがある。その中の1つとして存在するのが『デスマッチ』だ。
デスマッチとはその名の通り、ある程度の反則を許容し危険な状態で戦う試合のこと。
例えば、リングをレスラーが囲み、試合に参加する選手がリングから落ちた際に、すぐさまリング内に戻す『ランバージャック・デスマッチ』。リング四方を金網で囲った中で行う『金網デスマッチ』。リング下に釘を敷き詰める『五寸釘デスマッチ』。そういったリング内で決着をつけるデスマッチは以前から行われていた。
大きく変化したのは、大仁田厚率いるFMWが誕生したあたりだろう。
会場内どこでも戦場になるような形式が主流となった。またリングロープの代わりに有刺鉄線を使用、そこに電流を流し選手が触れたら爆発する『ノーロープ有刺鉄線電流爆破マッチ』が出現。そこからは設備等がどんどんエスカレートし時限爆弾まで登場。「これはプロレスではない」という議論が巻き起こるのも必然ではあった。
FMW以降、インディと呼ばれる小規模団体が次々に誕生し消滅していく。その多くはデスマッチを採用、様々な趣向をこらした試合形式が見られた。
公認凶器という名で多くのアイテムがリング内に持ち込まれることにもなった。パイプ椅子や有刺鉄線バット、鎌などはかわいい方で、蛍光灯、サボテン、そしてピラニアなど生物凶器まで登場した。