「ある地方会場の女性担当者は『蛍光灯を好きに使っても良い』と言う。あまり理解されていないようだったので、『蛍光灯が割れて粉々になる』と話しても、大丈夫と。心配だったので直前にも電話で説明したら、『すごいですね』と笑っている。当日は激しく『蛍光灯デスマッチ』ができました。試合後は本当に感謝しかなく、選手スタッフ全員で会場の隅々まで徹底的に掃除した」

 佐々木は二刀流である。選手としてだけでなく、経営、運営など社長業も行わないといけない。会場を借りるのさえ困難な状況下、タフな日常を過ごす毎日だ。

「デスマッチもいろいろ出尽くした感はある。だからここから先はアイディア勝負になる。また会場の規制などに関しては、挑戦したい気持ちが強い。決められたルールの中で、いかにお客さんが驚くようなことができるか。うちの団体名ではないですが、『フリー(=自由)』にやって行きたい」

 選手サイドはどうだろう。数年前までは当たり前にやっていたことができなくなる。使えていた凶器も使えない。エンターテインメントは過去との勝負でもある。常に新しい驚きを創造しなくては飽きられてしまう。そういう十字架もカリスマ葛西は背負っている。

「規制が増えれば正直、やりにくい。でも条件は誰もが一緒だし、その中でオレッチの凄さを出せれば良い。だから常に新しいことを考えている。大袈裟に言えば食事してても、シャワー浴びてても、トイレでもデスマッチを考えている。そこからアイディアを生み出して、試合中の状況に応じて出す。それがプロだと思う。そうじゃないと生き残れない」

 葛西は毎年恒例12月25日後楽園ホールでの自己プロデュース興行を終えると長期欠場に入る。生命を削って戦ってきた代償は小さくなく、身体中はボロボロだ。

「いつ復帰とは言えないけど、絶対に戻ってくる。オレッチはこれまでもこれからも負ける気持ちはない。やってきた戦いのすべてに自信がある。だから『どれか1つベストバウトをあげてくれ』と言われても無理。オレッチにとっては全部がベストバウト。地方の小さな会場も同じ。それだけは大きな声で言える」

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デスマッチはプロレスではないのか?