「水曜どうでしょう」の名物チーフディレクター、藤やんこと藤村忠寿さん(撮影/写真部・小黒冴夏)
「水曜どうでしょう」の名物チーフディレクター、藤やんこと藤村忠寿さん(撮影/写真部・小黒冴夏)
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自著にサインする藤村さん。真剣に、愛を込めています…(撮影/写真部・小黒冴夏)
自著にサインする藤村さん。真剣に、愛を込めています…(撮影/写真部・小黒冴夏)

 2019年12月25日、北海道限定で復活を遂げた、伝説のローカルバラエティ「水曜どうでしょう」。新シリーズを待ちわびたファンの叫びがネットには溢れ、北海道での占拠率50%という、驚異的な数字を叩き出した。

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 そしてとうとう1月15日(水)から、東京、名古屋、静岡など全国各地でも順次放送が開始されるのだ。

 そんなお祭りムードの中、番組の生みの親であり、構成スタッフの一人でもある藤村Dこと、藤村忠寿さんが、エッセイ集『笑ってる場合かヒゲ~水曜どうでしょう的思考』(朝日新聞出版)を上梓。今も色褪せることなく、多くの人を笑いの渦に叩き込む“仕掛け人”に、話を聞いた。

■「笑ってる場合かヒゲ!」必死の形相が生む笑い

――いよいよ6本目の「新作」。本放送が終わって18年ぶりです。これだけ時間が経っても新作を待ちわびる人がいる、その人気の秘密はどこにあると思われますか?

 人間関係。もう、それに尽きるんじゃないかと思ってますね。番組を始めたとき、大泉洋はまだ北海道の大学生。当時はまだ、誰も彼のことなんて知りません。6年の間には何度か海外ロケにも行ってますが、基本的に僕らが撮影し続けてるのは、大泉洋と鈴井貴之だけ。そして、彼らに指示を出す僕と撮影ディレクターの嬉野さん。この4人の関係性こそがすべてなんです。

 オーストラリアへ行こうがベトナムへ行こうが、僕らが興味あるのは絶景でも名産品でも珍しい動物でもなくて、ただただあのふたりが何をやらかすか、っていうそれだけ。そういう意味では、世界中どこだってよかったんです。旅ですから、途中で食事したりもする。僕ら自身は「へえ、こんな料理があるんだ」ってう発見や感動もありますが、そんなもの流したって面白くない。だから食事だの移動だのっていう場面はほんのワンカット、入るだけ。いや、飯食って腹壊した、っていうんなら別ですよ。そんな面白い展開があれば、そこは拾いますけど。平穏無事なところなんて誰も期待してないんですよ。

 今回発売したエッセイのタイトルにもなってる「笑ってる場合か!ヒゲ!」っていうのは大泉さんの言葉です。ヒゲ!っていうのはもちろん僕のことなんだけど、これを言う時の大泉さんは大抵が必死の形相なのね。原付バイクが急発進して『安全第一』の看板に激突したり、カヌーが流木に突っ込んだり。それがもうおかしくておかしくて「ぶははははは!」って僕は遠慮なく笑っちゃう。だけど当の本人は「死ぬかと思った」。だからこそ「笑いごとじゃねぇよ!」ってキレるわけですが、必死であればあるほど、見てるほうは面白いんです。毎度毎度「大泉さん、ケガしねーかなー」って思ってましたもん。本当に。

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本当は報道志望だったという藤村さん