「被災すると、恐怖や不安がもとで精神的ダメージがあるだけではなく、体育館に雑魚寝の避難所では、さらに不眠や疲労の蓄積で肉体的ダメージも受けてしまいます。高齢者に限らず、健康に問題ない人でも、突然エコノミークラス症候群で亡くなることもあります」

 避難所では、簡易ベッドを利用すればエコノミークラス症候群やホコリの吸引を防ぐことができる。災害時に出される菓子パン、おにぎり、カップラーメンといった食事が続くと高血圧・高血糖値で持病が悪化する危険性も高まる。そこで、避難所で安心して生活するためには「TKB(トイレ、キッチン、ベッド)」を48時間以内に準備することが重要となる。水谷氏は続ける。

「避難所への支援で先進的な取り組みをしているのがイタリアで、専門の訓練を受けた民間の職能支援者が約300万人います。衛生管理の知識を持つ調理師も、発災から数時間で派遣される仕組みになっています。日本のように菓子パンとカップラーメンではなく、発災後すぐにキッチンカーで避難所に向かって、パスタや肉料理、野菜などのバランスのとれた温かくて美味しい食事を提供します。イタリアのような取り組みをするためには、日本全体で避難所の環境改善を考えなければなりません」

 政府が対策をしていないわけではない。避難所の運営は原則として市区町村の自治体が運営することになっている。それが、大きな災害になって国が定める災害救助法が適用されると、救助に必要な部分の費用は都道府県や政令指定都市、国が負担することになる。『自治体職員のための災害救援法務ハンドブック 備え、初動、応急から復旧、復興まで』の著書がある岡本正弁護士は、こう話す。

「同法が適用されることで、政府は自治体向けに避難所環境の整備などについて様々な『通知』を出します。実は、そこにはトイレや食事、ベッドなどを準備するように明確に書かれています。しかも、必要な費用は法律にもとづき国や都道府県が負担することになるので安心です。しかし、現場で避難所を運営している自治体職員やボランティアらでも、そのことを知らない人が多い」

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政府のマニュアルで避難所について書かれていること