私は精神科医の馬場元です。老年精神医学の専門医として働いています。もちろん、高齢の方ばかりではなく、感情障害を持つ若い方など、メンタル治療においても数多くの患者さんを診てきました。
今回が最終回です。3話を通して、「認知症は病名ではなかった」「認知症のリスクファクター」「今年、認知症の新薬が承認される動きがある」「スーパーセンテナリアン(110歳)研究から加齢にあらがう成分が発見された」「薬の副作用でうつ状態になることがある」などがわかったと思います。
今回は、人生100年時代を幸せに生きる方法を教えます。すぐに実践できる内容ですので、大切な家族や友人、もちろん自分のためにも、ぜひ、お読みください。
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皆さんの頭の中にある脳には表面部分と中心部分があります。
表面は萎縮するなど弱く、逆に喜怒哀楽をつかさどる脳の中心部分は強くできています。この中心部分を活性化させることで認知機能や周辺症状、感情を安定させる「非薬物療法」も認知症の治療法としてあります。
非薬物療法には、運動療法や回想療法、音楽療法、作業療法などがあり、認知症の患者さんを診ていると、非薬物療法を積極的に取り入れている人のほうが、認知症の進行は遅い気がします。
「認知症になるぐらいだったら、がんになって死ぬほうがマシだ」と言う患者さんもいます。
話を聞いてみると皆さん「自己の尊厳が失われること」が怖いんですね。認知症は人格否定=ダメ人間になる・自分が自分でなくなるというイメージが強いのかもしれません。でも、そればかりではないのです。
■認知症になったおかげで、家族の時間が増えた
ある患者さんのお話ですが「父親が認知症になったおかげで家族の時間が増えました」という娘さんがいました。
なんでも父親の仕事が忙しく、すれ違ってばかりであまり会話もしてこなかったというのです。また、ある患者さんは、認知症になってから、いつもニコニコと笑顔で過ごすようになったといいます。