例えば、「イライラしないで大らかに過ごそう」「不平不満ばかり述べていないで周囲とコミュニケーションを取ってビジネスを進めていこう」「待ち合わせの時間はきちんと守って誠実な自分になろう」。

 毎日の自分の感情や行為を俯瞰(ふかん)で見て、軌道修正することで、たとえ認知症になったとしても人生100年を笑顔で幸せに迎えられるのです。どうでしょうか? 思ったよりも簡単ですぐに始められると思いませんか?

■認知症の発症前に、症状や進行を読み解く
 
 最後にドラマチックな話をします。

 家族の多くがアルツハイマーになってしまう、ドイツ系の移民がいました。しかも若年性アルツハイマーです。次は誰がなるのか、みんなおびえていました。しかしある時、このままではいけないと、家族は米ワシントン大学の医師の元を訪れます。

 それで始まったのが「DIAN(ダイアン)スタディー」。家族性(遺伝性)のアルツハイマー病の家族数百人に,発症する前の30歳台から2年毎に診察と検査を続けました。親がこの遺伝性アルツハイマー病だった場合,子供がアルツハイマー病になる確率は50%です。

 研究に参加した人たちは,自分が50%の確率で認知症になることを知りながら,献身的に検査を受け続けていたのです。そしてこの研究で遺伝性アルツハイマー病の原因遺伝子のひとつが発見されました。

 また今回の連載で「アルツハイマー型認知症になるのは脳内に異常なたんぱく質のアミロイドβが蓄積するから」と述べました。実はこのアミロイドβは認知症になる20年も前から脳に蓄積することが明らかになっていますが,これも認知症を発症する前から継続的に検査を行うDIANの調査によって判明したことです。
 
 これまでアルツハイマー型認知症に対して,アミロイドβの蓄積を減らす多くの薬剤の臨床試験が失敗に終わっています。

 その理由のひとつとして,認知症を発症した時にはすでに多くのアミロイドβが蓄積しており,そこから薬を投与してももはや遅いことが指摘されていました。

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