第二先発として期待したいのが小林と安田の二人。ともに技巧派で制球力が高いだけに安心感がある。セットアッパーは佐藤、山口、鈴木の三人。この時代には珍しくリリーフから台頭した投手である。そして抑えには江夏を置いた。本格的にリリーフに転向するのは翌年からであるが、卓越した投球術に対する信頼感は高い。

 捕手はベテランの野村、若手で伸び盛りの強打・田淵、ディフェンス型の大矢の三人を揃えた。野村がこれだけ豪華な投手陣を相手にどのようなリードを見せてくれるのかは、想像しただけでわくわくする。田淵は右の代打、DH要員としても使える。大矢はこの時期、盗塁阻止率が5割を超えており、野村の肩をカバーするにはうってつけの存在だ。

 捕手以外の野手も豪華なメンバーが揃った。トップバッターは世界の盗塁王・福本。続く若松も打率、出塁率ともに高く、チャンスメーカーとしてはうってつけ。4番の王はまだまだ健在で、左打者が並ぶことを考えて山本と有藤で挟む形とした。場合によっては掛布をサードで起用、前述したように田淵をDHで入れるなど、強打者で様々なバリエーションが組めるのも強みだ。

 セカンドは高木守道(中日)も迷ったが、年齢的に全盛期の山崎を選び、ショートは守備名人である山下を入れた。石渡と弘田はバックアップおよび、代走要員として貴重な存在である。

 阪急の全盛期だったということもあって、全体的にパ・リーグの選手が目立つラインアップとなったが、山本、掛布、山下などセ・リーグでも若手の台頭が見られ始めた時期であることはよく分かるだろう。実力のある先発タイプの投手が並び、長打力、機動力ともに兼ね備えた野手陣もなかなかの顔ぶれではないだろうか。(文・西尾典文)

●西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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