

『アサヒカメラ』が写真家128人に好きな絞り値をたずねたところ、「撮る対象によってさまざまです」(林典子)、「完全オートで写しているのでこだわらない」(森山大道)という回答があった一方、多くの写真家には好みの絞り値があることがわかった。
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■写真家が好きな絞りは開放とf8付近
回答を集計すると、好きな絞り値は、絞り開放付近と、絞り込んだf8付近に集中した。どちらか一方を好む写真家がいれば、その両方を好む写真家もいる。
まずは、絞り開放付近を好む写真家の声を紹介しよう。
「常に明るく撮るため」という動物写真家の前川貴行さんのように、できるだけ速いシャッターを切ることを意識した声もあったが、回答のほとんどは「ボケ味」(ハナブサ・リュウ)など、いわゆる「レンズの味」を生かしたいという声が多かった。
「目で見るものとは違うボケ感が得られるから」(川合麻紀)、「どんなレンズでも開放がいい。そのレンズの『素』が出るから」(小城崇史)、「レンズ全体を生かせる。周辺落ちも好き」(椎名誠)、「完成前の画質にレンズの個性を感じやすいから」(竹中隆義)、「美しいボケの中に浮かび上がる野生動物の姿が好きだから」(野口純一)、「50ミリでF1.4だと大きくボケるが、極端なボケではないため、その場の雰囲気を生かしやすい」(藤井智弘)、「人物撮影時のボケが好きです」(伏見行介)
■レンズの性能をいちばん発揮する絞り
絞りf8付近を好む写真家の声も紹介しよう。
意外と多かったのは「無難だから」(吉永陽一)という理由。
「とりあえず無難に撮れる」(小野寺宏友)、「ひとまずピントが十分」(桑原史成)、「無理のない描写が得られる」(中藤毅彦)、「近景から遠景まで、無難に描写する」(諸河久)
それに準ずる回答として、ピントの合った部分とボケとのバランスのよさを挙げる声もあった。
「描写と深度のバランスがよいから」(赤城耕一)、「ピントやボケもこれでいい」(都築雅人)、「フィルムのときからずっとf8。適当に被写界深度があり、ボケもあるから」(芳賀日向)