堺いわく、これは「家族にもちょっと反感を買うくらい、ここまでなんでやんなきゃいけないの、と」という話だった。そしてこの4年後、ふたりは離婚。岡田は会見で、堺が忙しすぎたことを理由に挙げ「もっと一緒にゴルフをしたかった」「お歳暮やお中元の処理をひとりでやるのがつらかった」などと主張した。この番組がなければ、離婚は回避できたかもしれない。
ただ、かくし芸が終わった最大の原因は、この番組がある段階で使命を終えたということではないか。最後の年の放送は、一部の新作を除き、総集編を振り返るかたちで行なわれ、恵俊彰がこの番組をこう分析した。
「今のバラエティ番組の、ホント、基本みたいなね」
これは的確な見方だろう。たとえば、映画やドラマのパロディは「オレたちひょうきん族」から始まるフジテレビのバラエティの定番となった。スタントのようなチャレンジ物も、ドッキリを含めたバラエティでよく使われる企画である。日本的な古典芸はもはやテレビから消えつつあるが、テレビ以前の文化をタレントが消化し、テレビで見せることにより、何かしらの橋渡しを果たしたといえる。とまあ、80年代あたりからのバラエティに、この番組が与えた影響は計り知れない。
■受け継がれる「かくし芸」のDNA
それゆえ「新春かくし芸大会」的なものは今もさまざまなかたちで受け継がれている。
ひとつは、ジャニーズバラエティだ。「SMAP×SMAP」はまさに、アイドルがコントをやるところがウケたし「嵐にしやがれ」では松本潤がイケメン芸能人とアクション対決をしたりしている。「ザ!鉄腕!DASH!!」の初期はTOKIOが電車と競走したりする企画が名物だった。このテイストを変型したのが正月番組の「ウルトラマンDASH」(放送日時も全盛期のかくし芸とほぼ同じ)である。
そして、もうひとつは、現役最強のバラエティ「世界の果てまでイッテQ!」だ。「新春かくし芸大会」の最終年、スタジオに集まったかくし芸ファンの芸能人のなかには、イモトやロッチ中岡の姿もあった。イモトは過去の映像を見ながら「私もチーターとかと競走してますけど、そんな緊張感とか比じゃないんだろうなと思って」と語っている。