「10年ぐらい前までは『忘年会は会社持ち』という会も多かったけど、今は少数派。年齢が上になると若い人より多く会費を出さないといけないし、二次会まで行くと1万円を超えることもある。得意先との付き合いでも、上の世代の時とは違って今は経費で落とすことは難しい。かといって全部は断れません。忘年会スルーをしたくても、できないというのが実情では」
時代の変化は、宴会場を提供する飲食店も感じている。千葉県市川市で居酒屋を営む女性は「数年前までは二次会で使われることも多かったけど、今は減りましたね。一次会でお金がかかるから、それで終わりにしちゃう人が多いみたい」と話す。
なかなか上がらない給料も、影響を与えているかもしれない。内閣府のレポート「40代の平均賃金の動向について」によると、日本人の給与を2010~12年の平均と2015~17年の平均で比べると、全年齢の平均は31.0万円から31.9万円に上昇している。ところが、40~44歳は34.7万円から34.1万円、45~49歳は37.9万円から37.4万円と、全世代のなかで40代だけが減少している。
今の40代は、戦後の第二次ベビーブームで生まれた「団塊ジュニア世代」にあたる。若いころは就職氷河期で正社員になれず、非正社員として社会人としてのキャリアをスタートさせた人も多い。1996年に改正された労働者派遣法の影響で派遣労働ができる職業が広がり、「派遣社員」が日本中に広がった時期とも重なる。いわゆる「ロストジェネレーション世代」だ。前出の40代男性も、その一人だ。
「私は36歳の時にはじめて正社員になったのですが、新卒入社した人に比べると、会社への帰属意識は薄いように感じます。若い人が忘年会スルーしたいのなら、無理して来なくていいのではと思う」
平成の30年間は、年功序列・終身雇用という「昭和の働き方」が変化した時代だった。良くも悪くも、同僚や仕事仲間とのコミュニケーションが濃密な時代ではなくなった。忘年会という風習も「昭和は遠くになりにけり」で、やがて過去の遺物になってしまうのだろうか。(AERA dot.編集部・西岡千史)