同年は7月11日のオールスター第2戦(長野)の3回に球宴史上初の単独本盗を成功させ、MVPを獲得。3日前の前半最終戦(近鉄戦)のお立ち台で宣言した「(球宴で)MVPを獲ります!」の公約を見事実現した。

 しかし、「上手の手から水が漏る」のことわざにもあるように、宇宙人も時には大失敗を演じることもある。

 阪神時代の1997年8月1日の巨人戦(甲子園)、2回に先制タイムリーを放った新庄は、6回に松井秀喜のあわや本塁打という大飛球を軽快にさばき、攻守に大活躍。

 3点をリードされた巨人の9回の攻撃も2死無走者。スタンドの「あと一人」コールのなか、代打・吉村禎章は中前に力ない飛球を打ち上げた。誰もが新庄のウイニングキャッチを確信した直後、なんと、打球はスライディングキャッチの新庄が差し出すグラブの脇をすり抜け、そのままカウンター気味に顔を直撃。「脳みそが揺れました」。芝生の上で大の字になった新庄が、数秒後、何とか起き上がると、スタンドは大爆笑の渦に包まれた。

 試合後、お立ち台に上がった新庄は「恥ずかしい。電光掲示板の光が(目に)入って」ときまりが悪そうだったが、「僕があんなプレーするから、面白いんですよね」と笑いを取るのも忘れなかった。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2018」上・下巻(野球文明叢書)。

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