12月に入ると、冬のボーナスの使い道に思いを馳せるビジネスパーソンは多いだろう。クリスマスや忘年会、新年会などイベントが目白押しで出費がかさむ時期とはいえ、1年間頑張った自分を労うために「自分へのご褒美」を贈るという習慣も特段珍しいことではなくなった。
「ご褒美」というキーワードを使ったテレビCMを見ると、以前は本来の「良い行いに対し褒めて金品を与えること」という意味のまま、子どもやペットに対して使われることが多かった。それが徐々に大人や自分に対する表現として使用されはじめ、近年は「自分へのご褒美」CMをよく目にするようになった。特に2011年以降は東日本大震災後の自粛・節約への反動や、先行き不安な景況が続くことで慢性的なストレスに囲まれており、自分で自分を甘やかすことで心のバランスを保とうとする意識が働いているのかもしれない。
■マンガを読むこともご褒美
ご褒美CMを業種別に分類してみると、エステや旅行といった比較的高額なサービスにはじまり、化粧品やヘアケア・ボディケア商品、アルコールや菓子、インスタント食品などの最寄り品まで多岐にわたる。
最近では電子コミック・電子書籍サービスの『コミックシーモア』が高橋一生を起用して“ご褒美CM”を放送した。仕事や家事を頑張った女性が1日の終わりにスマホでマンガを読みながらひとりの時間を満喫し、明日へのエネルギーを充電するストーリーで、「私への、ごほうび。」をコピーに展開した。高橋は「お疲れシーモア、する?」と女性に寄り添う“コミックシーモアの精”の役どころだ。マンガを読むことがご褒美とは何ともささやかな話だが、時間に追われて必死にタスクをこなす毎日の中で、張り詰めた心を緩めるひとときが癒しという感覚は、現代のリアルではないだろうか。
前回の記事でも紹介したが、日清食品は9月に女性向けのプレミアムタイプの袋麺である『ご褒美ラ王』を発売した。CMは、佐田真由美演じる母親が家事に追われてため息をつくと、天使の格好をした子どもたちが「頑張りすぎのママに」などと大豆イソフラボンやコラーゲン成分を配合した商品を薦める内容だ。