主婦を労うという切り口では、江崎グリコの『アーモンドピーク』がお笑いトリオ・ロバートの秋山竜次を起用して、カリスマアーティストになりきった彼が主婦の手抜きを“マイクロズボラ”と称して歌い上げるウェブ動画を2017年に公開。日常のちょっとした手抜きを全面的に肯定し、アーモンドピークでリフレッシュしてほしいというメッセージを伝えた。昨年からは “EASY★GOHOBING!(イージー・ごほうびング)”をキャッチコピーとしたCMを展開。大人の女性に向けて、少しでも頑張ったら自分にご褒美をあげようと提唱するアプローチを継続している。

■女性の方がご褒美を好む?

 こうしてみると、ご褒美CMは女性に向けた商品の訴求に多いようだ。性別を限定せずにアピールするものでは「1週間のご褒美」「ご褒美は神泡で」などのコピーで展開した『ザ・プレミアム・モルツ』のCMや、「旅にもっとご褒美を」というキーワードで出張に休暇を付け足して現地での観光を楽しむ“ブレジャー(ビジネス+レジャー)”を提唱した宿泊施設のオンライン予約サービス『Hotels.com』のCMなどがあるが、多くは大人の女性をターゲットにしたクリエイティブだ。メーカーにとっても経済的に自立した女性は優良な消費者ターゲットだ。例えば菓子メーカーにとっては、単価が高くプレミア感のある菓子の消費を促すには“ご褒美”というフレーズは最適だろう。

「男性より女性の方がご褒美を好む」とは言い切れないが、女性の活躍を推進・強調する社会的な背景もあり、世の女性たちは男性以上に頑張ることを求められている空気があるのかもしれない。有職女性だけでなく、専業主婦の労働対価や年収換算という議論も終わりがない。正当なご褒美と浪費の線引きは難しいところではあるが、このような風潮の中で「自分で自分を褒める」ことでストレスを軽減し、心の活力を満たそうとするのは自然な流れともいえる。そうした意味では、広告で「ご褒美」という フレーズを使うことには多くの共感を得るチャンスがあると思われる。

●CM総合研究所/1984年設立。「好感は行動の前提」をテーマに、生活者の「好き」のメカニズム解明に挑戦し続けている。平成元年から毎月実施しているCM好感度調査をもとに、テレビCMを通じて消費者マインドの動きを観測・分析しているほか、広告主である企業へダイレクトにコンサルティングを行い、広告効果の最大化および経済活性化の一助となることを目指す。

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