ダウンタウン・松本人志(C)朝日新聞社
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 11月6日、1年で最も話題になった言葉を選ぶ「2019ユーキャン新語・流行語大賞」のノミネート30語が発表された。お笑い関連では唯一「闇営業」がノミネートされていたが、実際にはこの問題に関連して流行した言葉はほかにもいくつかあった。

 その1つが「松本 動きます。」だ。ダウンタウンの松本人志が、闇営業問題を受けて宮迫博之と田村亮の衝撃的な記者会見が行われたことを受けて、自身のTwitterで「後輩芸人達は不安よな。松本 動きます。」とメッセージを発したのだ。このツイートは一般人にもマスコミにも注目され、松本が次にどう動くのか話題になった。

 その後、松本がレギュラー出演している7月21日放送の「ワイドナショー」(フジテレビ系)は、急きょ生放送で行われることになった。ここで松本人志は「吉本興業はこのままでは良くない。壊れていくんじゃないかという危機感を持った」と語った。そして、会見後に吉本社員らと話し合い、岡本昭彦社長が会見を開くべきだということを伝えた。

 番組内ではVTR出演した岡本社長が騒動について謝罪した後、「明日にも記者会見を開く」とコメントした。翌日には岡本社長の記者会見が行われ、その内容が宮迫らの会見とは別の意味で衝撃的だったのは周知の通りだ。

 闇営業問題がテレビや雑誌で盛んに報道されていたとき、松本は吉本の「主流派」に属していて、主流派ではない加藤浩次らとは対立していると言われていた。松本がそう呼ばれたのは、ダウンタウンを世に送り出した最大の功労者である大崎洋が吉本興業の会長職にあり、岡本社長、藤原寛副社長などの重役も軒並み松本のマネージャー経験者で占められていたからだ。ダウンタウン及び松本に深くかかわってきたスタッフが吉本の幹部だったため、松本自身もそちら側の人間だと思われていた。

 松本ぐらいのランクの芸人になると、仕事の大半は自分の既存のレギュラー番組であり、ほかの番組にゲスト出演したり、新しい番組が始まったりすることはほとんどない。ところが、闇営業騒動以降の松本は、いつになく精力的に動いていた。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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