しかし、1952年に破傷風トキソイドワクチンが導入され、1968年にジフテリア・百日咳(ひゃくにちぜき)・破傷風混合ワクチン(DTP)の定期予防接種が開始されました(現在は、不活化ポリオを加えた4種混合ワクチンとなっています)。ワクチン接種により、破傷風の患者数や死亡者数は激減したのです。

 とはいえ、実は近年増加傾向にある破傷風。国立感染症研究所の感染症発生動向調査によると、1999年には66件だった報告数が、2017年には125件と、増加傾向を認めていることがわかります。どうしてなのでしょうか。これは、定期予防接種をしっかりと受けていたとしても、最終接種(11歳から12歳)から10年もすると免疫が弱ってしまうからなのです。

 ですので、ボランティアに行く予定がある方、すでに行ってらっしゃる方は、ぜひ母子手帳を確認してください。特に22歳以上の方や、定期接種を受けていない50代以上の方は要注意です。もちろん、日頃からガーデニングをしている方や農作業に従事している方、工事現場で働いているという方など、日頃から土に触れる機会がある方は、ぜひ確認していただきたいと思います。そして、最終接種から10年以上経過してしまっている場合、破傷風ワクチンを1度回接種されるといいでしょう。

 そして、作業をするときは、手袋や丈夫な靴を履き、肌をしっかりと覆う服を着用し、ガラスや木材などでけがをしないようにすることが大切です。万一、けがをしてしまった際は、たとえ小さな傷口でもすぐにきれいな水で傷口を洗い、なるべく早期に医療機関を受診することが大切です。水による洗浄や、ワクチン接種、抗菌薬の投与などによって発症を防ぐことが可能になる場合もあります。放置せず、なるべく早くに対応することが大切ですしてください。

 土の上で転んでしまう、なんてことは誰にでもありうること。ぜひ皆さまに破傷風予防について考えていただけましたら幸いです。

○山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。

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