中日・星野仙一監督は、86年ドラフトで、5球団が競合した近藤真一(享栄)を引き当てるなど、「くじ運が強い」というイメージだが、99年のドラフトでは、くじの女神から見放され、やることなすことすべて裏目という悲哀をなめた。

 人材不足といわれたこの年、逆指名制度下にもかかわらず、1、2位とも逆指名で占めたのは巨人をはじめ5球団しかなく、高校生が1、2位で11人も指名された。

 最大の目玉は、高校ナンバーワン左腕・河内貴哉(国学院久我山)。中日と相思相愛だったにもかかわらず、近鉄、広島と競合になり、抽選がウエーバー順で最後の3番目になったことも災いして、タバコの「ラッキー・ストライク」をお守り代わりに持っていた広島・達川晃豊監督(※達川光男氏の広島監督時代の登録名)に先を越されてしまった。残り物に福がない以上、星野監督も腕の振るいようがない。

 続いて2位の田中賢介(東福岡)も日本ハム西武との競合。今度は逆ウエーバー順で1番くじを引いた星野監督だったが、封筒を見ただけで「またダメだ!」と叫び、結果も確かめず自席に戻ってしまった。その予感は的中し、田中は日本ハムが引き当てた。

 そして、2度あることは3度あった。外れ1位で朝倉健太(東邦)、2位で宮本大輔(延岡学園)の名前を書いて再提出すると、なんと、河内の抽選に敗れた近鉄が宮本を外れ1位で提出していたことから、優先順位で三たび敗れる羽目に……。

 結局、外れ外れ2位で福沢卓宏(滝川二)、3位で山北茂利(トヨタ自動車)と計3人の投手を指名すると、「4位でどうしても欲しい選手はいなかった」という理由で、真っ先に会場をあとにした。

 ちなみにこの年、中日が権利を放棄した4位以下の指名選手からは、ダイエー4位・川崎宗則(鹿児島工)、近鉄5位・岩隈久志(楽天)と後のメジャーリーガーが2人も出ており、これまた裏目?外れ1位の朝倉が通算65勝と活躍したことが救いだった。

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ドラフト史上最もくじ運の悪い男