

世界の頂点を目指し、国際大会に参加するスポーツ選手たちのそばには、遠征に一緒に参加して彼らの健康管理や競技レベル向上をサポートするスポーツドクターの存在があります。今回はそんな帯同スポーツドクターがいったいどんな仕事をしているのか、どんな人が選ばれているのかについて、日本臨床スポーツ医学会理事長・松本秀男医師が教えてくれます。
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陸上、水泳、サッカー、ラグビー、野球、スケートなど、各種スポーツの大きな競技団体にはほとんど、選手たちのメディカルサポートをするためにスポーツドクターが所属しています。各団体の代表選手たちが試合に参加するときには、帯同スポーツドクターが、国内のみならず、世界選手権やワールドカップなどの遠征試合にも同行します。
帯同スポーツドクターは、いったいどのような仕事をするのでしょうか。
海外遠征先では、競技によるけがの予防・治療はもちろん、選手たちの健康を全般的に管理し、風邪・腹痛・時差ぼけなどを含むあらゆる体調不良への対応を帯同スポーツドクターが担当します。そのため、現場で必要になりそうな医薬品や医療用具を事前にすべてピックアップし、救急箱に入れて準備していきます。
そのほか、感染症への対策も欠かせません。大会が開催される国により状況が異なるため、出発前には必ず現地の感染症流行情報を収集し、選手と監督・コーチらを含むスタッフ全員に必要な予防接種をおこないます。
さらに、ドーピング管理も重要な仕事です。遠征先で知らず知らずのうちにドーピング陽性となってしまう「うっかりドーピング」が起こらないよう、違反物質が含まれる現地のサプリメントやエナジードリンク、食品、医薬品などについて選手たちに注意喚起します。
また帯同ドクターは、万が一、選手が現地での治療が必要になった場合にも、すぐに対応しなくてはなりません。そこで、あらかじめ信頼できる病院はどこかを調べて、確保しておくのです。