9日に関東地方に上陸した台風15号の影響で、千葉県内では今も停電が続く。なかには水道が止まっている地域もあり、復旧が遅れた地域に住む住民の疲労はたまり続けている。2007年に千葉県鴨川市の山中に移住したジャーナリストの高野孟さんも被災者の一人だ。台風直撃の後から、どんな日々を過ごしたのか。被災者の一人として自らの状況を記した『高野孟のTHE JOURNAL』の原稿を転載する。
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台風15号が引き起こした千葉県の大停電は、当初は最大93万戸、とりわけ私自身が居住する鴨川市を含む房総半島南部の安房地域では、復旧にまだこれから2週間程度かかると言われる絶望的な状況にある。
東日本大震災の際には我が家は当初13時間連続の停電で、灯りがない、空調暖房が止まる、テレビが点かず何が起きたのか分からない、冷蔵庫が止まる、揚水ポンプが動かないので水が出ない……等々に直面したが、それでもまだ寒い時期で、暖房を薪ストーブに頼り、調理台は幸いにしてプロパンガスなので煮炊きをすることができて、何とか復旧までの時間を乗り越えることができた。
しかし、今回は、多少とも和らいでいるとはいえ、残暑厳しい時節であり、冷房が効かないのが何より辛く、少し動くと汗だくになるが水が出ないのでシャワーを浴びることもできない。固定電話はもちろん携帯も光回線や無線ネットも遮断されたままで、家族や知人と連絡をとることもできず、東京までの高速バスの運行状況を確かめる術もない。その状況がすでに150時間も続くという、まことに過酷な自宅避難民状態である。
■「想定外」は今や弁解にすぎない
台風そのものはもちろん誰のせいでもない天災で、風速60メートルという暴風の強烈さも、それが房総半島西側の東京湾岸に沿って北上し千葉市付近に上陸するというコースの異常さも、「想定外」だったと言うしかないのかもしれない。
しかし、8年前に3・11を体験した後では「想定外」はもはや死語化したのではなかったのか。