感染症は微生物が起こす病気である。そして、ワインや日本酒などのアルコールは、微生物が発酵によって作り出す飲み物である。両者の共通項は、とても多いのだ。
感染症を専門とする医師であり、健康に関するプロであると同時に、日本ソムリエ協会認定のシニア・ワイン・エキスパートでもある岩田健太郎先生が「ワインと健康の関係」について解説したこの連載が本になりました!『ワインは毒か、薬か。』(朝日新聞出版)カバーは『もやしもん』で大人気の漫画家、石川雅之先生の書き下ろしで、4Pの漫画も収録しています。
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バターや生クリームがリッチなフランス料理を食べているのに、フランス人に肥満は少ないし健康指標も悪くない。これがフレンチ・パラドックスと呼ばれている現象だ。
その根拠としてポリフェノールたっぷりな赤ワインを飲んでいるからではないか、という説明がなされてきた。
しかし、不飽和脂肪酸たっぷりの地中海食よりもフランス人の食生活のほうが健康的だ、というデータは乏しい。フランス人は赤ワインだけでなくチーズを食べるから健康なんだという意見もあるが(Petyaev IM, Bashmakov YK. Medical Hypotheses. 2012 Dec 1;79(6):746–91, Lallès J-P. Med Hypotheses. 2016 Jul;92:7–11)、この論争にはまだ決着が付いていない。
フランスは先進国の中でも喫煙者が多い国だ(OECDデータ。https://data.oecd.org/healthrisk/daily-smokers.htm)。アルコール消費量も近年ワインを飲まない若者が増えているといわれているが、それでもOECD6位だ(https://data.oecd.org/healthrisk/alcohol-consumption.htm#indicator-chart)。
ちなみにOECD加盟国のアルコール消費量で、1位は(当然のごとく)ロシアなのだが、この国の健康指標はまったくよくない。