認知症の特徴的な症状は、もの忘れという印象を持たれる読者も多いことでしょう。しかし、記憶の障害が目立たなくても、怒りっぽくなったり、ルールやマナーが守れなくなるなどの行動上の変化も認知症の症状の一つです。千葉大学病院精神神経科特任助教の大石賢吾医師が相談に答えます。
【40代女性Aさんからの相談】最近、実家の母と電話で話したとき「ささいなことでもお父さんがきつく当たるようになった」と相談を受けました。両親はとても仲がよく、子どものころからの記憶でもたまに小言を言うくらいで、けんかをしていた印象もありません。先日、実家に帰ってみると、いつもどおりの優しい父なのですが、確かに母には何かとイライラしてしまうようです。普段はきちんとしているのにシャツがはみ出したままで気になりました。ネットで調べていたら、年齢的にも認知症なのかもと心配しています。もの忘れの症状ははっきりしないのですが、一度診てもらったほうがよいでしょうか。
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離れて暮らしているお父さまについて「なんか最近変なのよ」と言われたら……。いても立ってもいられない心持ちなのではないでしょうか。Aさんのお父さまが認知症かと問われると判断はできませんが、ご相談にある変化が矛盾するわけでもありません。ご家族からみて普段の様子と違うようでしたら、ぜひ一度受診して相談してみることをお勧めします。
認知症の特徴的な症状は、もの忘れという印象を持たれる読者の人も多いかもしれませんが、本コラムの第2回(2019年4月4日公開)でレビー小体型認知症に伴う幻視、第7回(2019年6月20日公開)で被害妄想について取り上げてきたように、種類や病期によって目立つ症状が異なることがあります。また、第9回(2019年7月18日公開)の薬を飲んでくれないというご相談のように、見る人の立場によって受けるストレスの大きさも違ってくるかもしれません(本人は困っていない可能性もあります)。