



日本を訪れる旅行者の楽しみの一つは食事です。外国人にとって和食の代表格は寿司ですが、日本料理は地域により様々な特徴があり、その個性を比べて楽しむことも出来ます。中華料理のラーメン、ポルトガルが発祥の天ぷら、インドのカレーなど、違った国の料理の影響も受け入れています。
中東も料理の種類は多いです。野菜サラダ、宗教上の理由で豚肉を食べないので牛肉やチキン、ラムなどの肉料理、ときにはスパイシーな料理もありますが、何といっても中東の代表的な料理は「フムス」で決まりです。茹でたひよこ豆に中東の白練りゴマ、オリーブオイル、レモン汁、にんにく、塩を加えてペースト状にしたものです。茹でたひよこ豆があれば簡単に作ることができます。
イスラエルではメインとして、またサイドディッシュとしても食べますが、多くはピタパンや野菜につけて食します。定番のハラール食であり、材料に動物性の食材は含まれていません。ひよこ豆から良質なたんぱく質を摂ることができ、ベジタリアンが多く住む米国や英国では大人気の料理です。
とはいえ、フムスに関する議論は平和なことばかりではありません。国境、歴史、水、人種、指導者の演説などをはじめとする中東地域の数々の争いとよく似た問題をかかえています。イスラエル人は、フムスは自分たちのもので自国料理の中心であると主張しています。ロンドンやニューヨークにおしゃれなレストランを開いている若いイスラエル人シェフは、フムスを「イスラエル」というメニュー名で出しています。
一方、パレスチナ人は、もともとは自分たちの料理でイスラエル人が盗んだと言っています。レバノン、シリア、ヨルダン、イラクもフムスの由来について議論しています。各国それぞれ自国由来を主張していますが、恐らくフムスの源流は数千年前の古代エジプトで、ここから中東全域に広がっていったのではないかと思います。
フムスをめぐる激しい議論の中で、特にイスラエルとレバノン間の争いは群を抜いています。数年前、イスラエルのエルサレムから西に10キロ離れたアブ・ゴシュ村でギネス世界記録が作られました。なんと4トンものフムスが巨大な皿に盛られたのです。村人のほとんどはボランティアで参加しました。「私たちのフムスが世界一だと見せることができた」。あるレストランのオーナーの発言が紹介されていました。