2020年の東京五輪・パラリンピックを控え、国民のスポーツへの関心が高まっています。アスリートを支える裏方に、スポーツドクターという存在があることをご存じでしょうか? 連載「スポーツ医が語る『スポーツ×医療』まるわかり講座」では、スポーツ医学やスポーツドクターにまつわるさまざまな話を、日本臨床スポーツ医学会理事長・松本秀男医師に語ってもらいます。
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みなさんは「スポーツドクター」と聞いて、どんなことをする人だとイメージするでしょうか。
例えばボクシングで、ドクターストップをかける医師の姿かもしれません。選手が負傷してダウンした際、試合に立ち会う医師が試合続行不可能を宣告し、テクニカルノックアウトで勝敗が決まる――そんな場面がテレビの試合中継で映るのを、多くの人が見たことがあるでしょう。あるいは、サッカーで選手同士が衝突するなどして転倒したまま起き上がれないとき、ピッチ上に駆けつけるイメージでしょうか。
それもスポーツドクターの仕事の一つですが、さまざまなスポーツの大会や試合で、選手のメディカルチェックをしたり、ドーピング検査をしたりするのも、スポーツドクターならではの仕事です。しかし、スポーツドクターの活躍の場はそれだけにとどまりません。
スポーツドクターとは、一言でいえば「スポーツ選手の診断・治療を専門とする医師」を指します。治療も、ただ治ればいいというわけではなく、目標とする試合などがある期日までに復帰できるように、かつ、より高いパフォーマンスが出せるようにサポートしていく必要があります。
ほかにも、
○国内外で開催される大会や試合の帯同医師として選手やチームに同行し、現場でメディカルケアや競技力向上のサポートをする。
○競技団体に所属して、医療態勢を整備する。
○スポーツの現場ではなく、後方の病院などの医療機関で日常診療をおこない、選手のけがやスポーツ外傷・障害の治療に取り組む。
○スポーツ選手に限らず一般の人たちのスポーツ障害の治療・予防やスポーツによる健康維持・増進をサポートする。
○大学や研究機関でスポーツ科学やスポーツ医学の研究をおこなう。
このような幅広い仕事に、スポーツドクターは関わっているのです。