神奈川県にはオオクニヌシを祭る「子神社」や、“子ノ神”という地名なども残っている。オオクニヌシは大黒天とも同一視され、仏像や仏画でも大黒天とネズミが一緒に描かれることもある。
長くなったが、つまりダイコクさまを祭る神社仏閣では、子年最初の干支にちなんだ「甲子祭」という催事が行われていることが多い。
●「甲子」と野球関係のご利益
「甲子神社(きのえねじんじゃ)」という名を持つ社がいくつかある。ダイコクさまを祭っていることに由来する社名だろうが、なぜか野球に関する祈願が多い。例えば、静岡県の甲子神社、福島県の甲子大国社、社名は違うが群馬県の中之嶽神社では甲子祭が行われており、これにちなんで野球守も授与されている。いずれも、甲子園という名前つながりからのご利益である。
丑の日とうなぎのつながりよりも、縁のすそ野が広がった「甲子」と野球のつながりはとても興味深い。
●野球の神さまを祭るのは
もちろん甲子園に隣接する「素盞嗚(すさのお)神社」は、「甲子園神社」「タイガース神社」との別名があるほど甲子園関係者には知られるお宮で、岡田彰布氏の寄贈した野球塚や、星野仙一氏揮毫(きごう)のモニュメントも建立されている。
一方、関東で野球関係者が祈願に訪れる神社としては、その名もずばり「やきゅう神社」が一番のオススメだ。埼玉県にあるこの社は正確には「箭弓(やきゅう)稲荷(いなり)神社」と書く。“箭弓”とは矢と弓を指すもので武運長久を祈願する武士たちの祈願所であったのだが、現代では“箭弓”は野球と読み替えられ、境内にはバット型やホームベース型の絵馬が所狭しと掛けられている。箭弓稲荷神社は東京の下町にも分社されていて、最近では小さな社にも参拝者が訪れるようになった。
近ごろの選手や関係者たちの祈願は少し変わったようだ。以前は「勝てますように」といった必勝祈願がほとんどだった絵馬に、「ケガなくプロ野球選手になれますように」といったリアルなものが増えてきた。甲子園までだった以前の夢は、もっと先、今では世界にまで広がっているのだから当然なのかもしれない。