感染症は微生物が起こす病気である。そして、ワインや日本酒などのアルコールは、微生物が発酵によって作り出す飲み物である。両者の共通項は、とても多いのだ。
感染症を専門とする医師であり、健康に関するプロであると同時に、日本ソムリエ協会認定のシニア・ワイン・エキスパートでもある岩田健太郎先生が「ワインと健康の関係」について解説したこの連載が本になりました!『ワインは毒か、薬か。』(朝日新聞出版)カバーは『もやしもん』で大人気の漫画家、石川雅之先生の書き下ろしで、4Pの漫画も収録しています。
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それはそれとして、アルコールには一定の健康利益があるのでは、というデータもある。いろいろな病気の原因となる飲酒だが、がんなどのリスクは高まっても全体として死亡率は下がる(全死亡率の低下)というデータがある(Thun MJ et al. N Engl J Med. 1997 Dec 11;337(24):1705–14前掲)。
病気は増える、でも死亡率は減るというややこしい議論だ。
「全死亡率」とは、どんな原因でも関係なく死亡するかどうか、というものだ。男性だと1日4単位まで、女性なら2単位までのアルコール摂取をすると、飲まない人よりも全死亡率が下がるというデータもある。
ただし、飲酒量が増えると(男性なら1日5単位以上、女性なら3単位以上)死亡率は男女ともに増すようだ(Di Castelnuovo A et al. Arch Intern Med. 2006 Dec 11;166(22):2437–45)。
■男性ならばワイン1本分とちょっと
1単位のアルコールとは純アルコールで20gに相当する。ワインならば1,2杯、ビールだと中瓶1本あるいは中ジョッキ一杯程度(約500mL)、日本酒だと1合(180mL)、焼酎なら70mL、ウイスキーやブランデーならダブルで一杯(60mL)くらいだ。