岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著に『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』、『ワインは毒か、薬か。』など
岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著に『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』、『ワインは毒か、薬か。』など
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男性なら1日5単位以上、女性なら3単位以上で死亡率は男女ともに増すようだ。ちなみに、1単位のアルコールとは純アルコールで20gに相当する(写真:Getty Images)
男性なら1日5単位以上、女性なら3単位以上で死亡率は男女ともに増すようだ。ちなみに、1単位のアルコールとは純アルコールで20gに相当する(写真:Getty Images)

 感染症は微生物が起こす病気である。そして、ワインや日本酒などのアルコールは、微生物が発酵によって作り出す飲み物である。両者の共通項は、とても多いのだ。

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 感染症を専門とする医師であり、健康に関するプロであると同時に、日本ソムリエ協会認定のシニア・ワイン・エキスパートでもある岩田健太郎先生が「ワインと健康の関係」について解説したこの連載が本になりました!『ワインは毒か、薬か。』(朝日新聞出版)カバーは『もやしもん』で大人気の漫画家、石川雅之先生の書き下ろしで、4Pの漫画も収録しています。

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 それはそれとして、アルコールには一定の健康利益があるのでは、というデータもある。いろいろな病気の原因となる飲酒だが、がんなどのリスクは高まっても全体として死亡率は下がる(全死亡率の低下)というデータがある(Thun MJ et al. N Engl J Med. 1997 Dec 11;337(24):1705–14前掲)。

 病気は増える、でも死亡率は減るというややこしい議論だ。

「全死亡率」とは、どんな原因でも関係なく死亡するかどうか、というものだ。男性だと1日4単位まで、女性なら2単位までのアルコール摂取をすると、飲まない人よりも全死亡率が下がるというデータもある。

 ただし、飲酒量が増えると(男性なら1日5単位以上、女性なら3単位以上)死亡率は男女ともに増すようだ(Di Castelnuovo A et al. Arch Intern Med. 2006 Dec 11;166(22):2437–45)。

■男性ならばワイン1本分とちょっと

 1単位のアルコールとは純アルコールで20gに相当する。ワインならば1,2杯、ビールだと中瓶1本あるいは中ジョッキ一杯程度(約500mL)、日本酒だと1合(180mL)、焼酎なら70mL、ウイスキーやブランデーならダブルで一杯(60mL)くらいだ。

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飲酒量と死亡率に因果関係はない?