佐々木朗希投手(左)と言葉を交わす国保陽平監督(c)朝日新聞社
佐々木朗希投手(左)と言葉を交わす国保陽平監督(c)朝日新聞社
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 各地で甲子園への切符をかけた熱戦が繰り広げられるなか、岩手大会は25日に決勝が行われた。大船渡の最速163キロ右腕、佐々木朗希投手と花巻東打線の対決が期待されたが、佐々木投手は登板しないまま、試合は12-2で花巻東が制した。大船渡を率いる国保陽平監督は佐々木を登板させなかったことについて「故障を防ぐため」と話した。この決断については賛否が分かれるところだ。同じ岩手県内の盛岡大付の前監督、沢田真一さんはどう見たのか、見解を聞いた。

【写真】朗希はベンチで1人になるとこの表情…

――佐々木朗希投手の登板機会はありませんでした。

沢田:私が監督だったら、投げさせたでしょうね。「朗希頼むぞ」と言って送り出した。そのうえで、野手陣に「接戦ではなく、お前たちが打って点差をつけて楽に投げさせてあげよう」と鼓舞したと思います。もちろん、朗希くんがケガをしていない場合です。50パーセントくらいのパフォーマンスしか出せないようでしたら、登板させません。

――登板させなかった国保陽平監督の決断についてはどう考えますか。

沢田:勇気ある決断だったと思いますし、賛成です。仮に本人が投げたいと言っても、指導者にはケガのリスクと子どもの将来を考える義務があります。国保監督も、部員たちのいろいろな思いを掌握したうえで、今回の試合と朗希くんの将来を天秤にかけた苦渋の決断だったと思います。

――苦渋の決断を強いられる背景には、トーナメント制の弊害もあると思います。

沢田:私としては、春と秋の大会のように、ブロックごとにリーグ戦をして、予選を突破したチームだけでトーナメントをするべきだと考えています。そうすれば、トーナメントでの試合数が減り、連戦の負担は軽減されます。ただ、そのためには試合を開催する球場を増やさなくてはいけない。夏の大会では、県内の3球場で行っていますが、それをもう一つ二つ増やしたいところですが、審判の数が不足しているのだと思います。

――今回のケースは高校野球のあり方が議論されるきっかけになりそうです。

沢田:時代とともに、価値観が変わっているのは教育の現場も同じです。これまでは根性論だったり、勝利至上主義がまかり通ってきましたが、今後は選手を尊重し、生徒たちの力に任せる指導が求められる。国保監督は、新しい時代の指導者像だと思います。

 試合後、佐々木は「監督の判断なのでしょうがない」と思いを語った。しかしその一方で「投げたい気持ちはあった」とも語ったという。

 夏の大会のリーグ戦導入については、今後も議論されることになるだろう。

(AERA dot.編集部/井上啓太)