「平成28年(2016年)歯科疾患実態調査」では子どものむし歯が平成5年(1993年)に比べ、大きく減っていることが明らかになっています。例えば平成5年では7歳で90.5%あったのが、平成28年ではなんと35.3%。
この子どもたちの親御さんは子どもの頃、「むし歯の洪水」といわれ、むし歯だらけだった世代です。遺伝的な影響が強ければ、同じように最近の子どもたちもむし歯で困っていることでしょう。
むし歯が激減したのは、むしろ、この世代の親御さんが「子どもだけはむし歯にさせたくない」と、歯みがきを励行させ、歯科医院でフッ素塗布やシーラントなどの予防治療を熱心にしている結果だといわれています。つまり、親にむし歯がたくさんあっても、生活習慣を変えることで、子どもをむし歯にさせないようにできるのです。
一方で、口腔崩壊といわれる、10本以上むし歯がある子どもも増えていて、二極化しています。口腔崩壊の子どもの背景には貧困や虐待などがあるといわれ、やはり、生活環境の影響が大きいといえます。
むし歯や歯周病になりやすいのではないかと心配している人は、歯科医院で「唾液検査」をしてもらうといいでしょう。
複数の会社が検査キットや装置を提供しています。広くおこなわれているむし歯の唾液検査では、ミュータンス菌やラクトバチルス菌などの量から、むし歯のなりやすさを診断します。
歯周病菌については歯周ポケットの中の唾液をペーパーポイントという歯科材料で吸い取り、これをリアルタイムPCR法(歯周病菌のDNA検査)という方法で増殖させて、歯周病菌の量を調べます。
いずれも唾液を採取後、検査会社に検体を送るスタイルで、1週間程度で結果が出ますが、最近では機器に測定装置が付いていて、約5分でむし歯や歯周病、口臭のリスクを測定できる検査法(唾液検査装置SiLL-Ha・シルハ)も登場しています。
客観的に口の中の細菌の状態がわかることは興味深いですし、口腔ケアや治療の動機づけにもなるでしょう。むし歯や歯周病を治療し、口の中がきれいになった後にもう一度、唾液検査をおこなうと、数値が改善し、むし歯や歯周病のリスクが低くなっている人がほとんど。つまり、むし歯体質、歯周病体質などとあきらめないほうがいいということなのです。
※「歯科医が全部答えます!聞くに聞けない『歯医者のギモン』」は、次回から毎月第3月曜日の配信になります。
○若林健史(わかばやし・けんじ) 歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演