平成以降最悪の放火事件となった京都市伏見区のアニメ制作会社「京都アニメーション」(京アニ)の火災。19日10時現在、死者は33人(男性12人、女性20人、不明1人)にのぼり、意識不明の人もいるという。確保された男も重体となっている。
事件の概要は国内のみならず、海外でも大々的に報じられている。米CNNやCBS、英BBCや独DPA通信などがトップ級のニュースとして取り上げたほか、UAEに拠点を置くアラブ系メディア「Sky News Arabia」でも大きく取り上げられた。
アメリカのアニメ配給会社「センタイフィルムワークス」では、京アニの支援金を募るクラウドファンディングが実施され、開始から17時間が経った19日午前8時時点で100万ドル以上の寄付が集まっている。
このような国際的な注目は、京アニはクールジャパンの根幹を担う企業であり、世界的な評価が極めて高いのだ。京アニがどれほど日本の「至宝」なのか、改めて紹介したい。
■いち早くデジタル化を進める
京アニの創業は1981年。手塚治虫が創設したアニメ制作会社「虫プロダクション」にいた八田陽子氏が、結婚を機に京都府宇治市に仕事の拠点を移したことが始まりだった。長らく下請け制作に携わっていたが、丁寧な仕事ぶりに定評があったという。京アニに仕事を依頼するために、制作のスケジュールを調整する発注元もあるほどだったという。「魔女の宅急便」や「紅の豚」といったスタジオジブリ作品にも携わっている。
かねてより京アニは高い技術を持つ会社として知られていたが、アニメ制作の元請けとなったのは2003年。創業から20年以上の時間がかかっている。ここには、地方に拠点を置くことの難しさがあったためだった。
21世紀に入るまで、アニメの制作手法はセル画を用いたアナログな方法が中心だった。この方法だと、全ての工程で元請けに“現物”の制作物を集める必要がある。そのため、東京に拠点を置かない制作会社しか元請けが困難である事情があったのだ。アニメ制作に関わる企業の大半は東京にあるため、東京に拠点があれば自社で車を出して迅速に回収することが可能だが、地方に拠点があるとそう簡単にはいかない。しかし、現在主流のデジタルデータの場合、完成物をネット回線を通して送ることが可能になる。