ラジオのパーソナリティ、ニュースサイトの運営、多数の執筆活動、さらにはNPO 法人の代表理事を務める荻上チキさん。評論家という肩書ながら、社会活動にも積極的に参加し、“ダメ出し”ならぬ“ポジ出し”(ポジティブな提案)という考え方が支持されている。そんな荻上さんは、成城大学卒業後、東京大学大学院学際情報学府修了というキャリアをもつ。好評発売中のAERAムック『大学院・通信制大学2020』のインタビューでは、現在の活動は、大学院で得た経験の「延長線上にある」と語っている。その一部を紹介する。
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■ゼミの教授の異動で他大学院へ進学
――成城大学で文学を学び、東京大学の大学院でメディア論を研究されたとのことですが、大学院を目指したきっかけを教えてください。
荻上:学部生時代は成城大学の文芸学部で、近代日本文学のゼミに入りテクスト論を研究していました。その研究が楽しかったこともあり、そのまま大学院に進もうと考えていました。しかし、ゼミの教授が他大学に異動することになって……院に進むなら他大学という選択肢しか残されませんでした。
当時からブログの更新やニュースサイトの運営をしていて、教授からも「君は文学そのものに興味があるというよりは文学を通じて社会そのものに興味があるんだね」と言われていて。
実際、メディア論やジャーナリズム論の本が面白く、書籍の発行イベントやトークイベントにも参加し、社会について直接学べる領域に強く興味を持っていました。文学も、小説というメディアなので、学部時代に培った知識は大学院の受験にも使えるだろうし、進学してからも、その知識をひとつのフックとして使えるだろう、と考えて。
他の文学部の受験も考えましたが、崩し字や漢語を学んでまでその世界に飛び込む意欲はなかったので、メディア論を専攻しよう、というのは割とすんなり決まりました。受ける大学院も、社会情報学系に絞っていきましたね。