スケールの大きさを感じさせる大商大高の上田大河 (c)朝日新聞社
スケールの大きさを感じさせる大商大高の上田大河 (c)朝日新聞社

 今月9日、全国の先陣を切って神奈川で夏の地方大会の組み合わせ抽選が行われた。これから夏の甲子園に向けて各地で熱戦が繰り広げられることになる。一昨年は中村奨成(広陵→広島)、昨年は吉田輝星(金足農→日本ハム)がフィーバーとも言える大活躍を見せ、ともにドラフト1位でプロ入りしたが、改めて振り返ってみるとこの時期はまだ全国の野球ファンには知られた存在ではなかった。

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 そこで今回は中村や吉田のように3年春までは甲子園未出場で、最後の夏に一気に大ブレイクする可能性のある高校生のドラフト候補を何人かピックアップして紹介したいと思う。

 早くから投打にわたり高い潜在能力を見せているのが岡林勇希(菰野)だ。1年時から140キロを超えるスピードをマークしていたが、その後も順調に成長しており最速は150キロをマークするまでになっている。少し重心が上下動するフォームでコントロールにばらつきがあるのは課題だが、縦に鋭く振れる腕の振りは一級品。2年の春には下級生ながら高校日本代表の候補にも選出されている。

 投手としても、もちろん素晴らしいものがあるが、左打席から長打を放つ打撃に対する注目度も高い。フォロースルーが大きくとれるスイングは福留孝介(阪神)を彷彿とさせるものがあり、昨年夏の三重大会では2打席連続ホームランも放っている。投打両面でプロから熱い視線を浴びる逸材だ。

 この春の高校日本代表候補合宿では佐々木朗希(大船渡)のマークした163キロが大きな話題となったが、ともに高い評価を得たのが浅田将汰(有明)だ。昨年秋から九州では名の知れた存在だったが、この冬の間に体が一回り大きくなり、それに比例して投げるボールもスケールアップした。

 テイクバックで右肩が下がって少し引っかかるようなフォームだが、真上から振り下ろす腕の振りが特徴で、最速148キロのストレートは角度も威力も申し分ない。また、しっかり腕を振って変化球を投げることができ、緩急の使い方が上手いのでストレートがより速く見えるのも大きな長所だ。この春の本県大会、対熊本北戦では9回1死までノーヒット、最終的には被安打1、19奪三振で完封という圧巻のピッチングを見せている。終盤でも球威の落ちないスタミナも魅力だ。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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