そしてこの日のダービーは、約3.5万人の大観衆が見守る中キックオフ。シーズン前半の不調が嘘のように、ガンバ選手はピッチを走り回りセレッソを「1-0」と退けた。
ーー関西に充満するスポーツを取り巻く熱。
対戦したセレッソ側も多くのファン・サポーターによって桜色に染まった。
「ブルーの星も今やブラックホールの中」
試合前、セレッソ側から出された横断幕である。
この手の挑発文言には賛否両論あるし、実際どこまでが許容範囲なのか、正解もない。しかし個人的には、差別や誹謗中傷ではない多少のものは雰囲気作りにも一役かっていると感じる。なんでもかんでも排除しようという流れは安易であるし、何より箱が生み出す熱気を奪い去ってしまう。両クラブ関係者やファン・サポーターなど、関わるものすべてが作り出す空気感が、新たな可能性を生み出すことも多い。
この試合でガンバは「ブラックホールの中ではない」、ということを証明した。現在低迷しているが、将来性を感じさせる若手選手も多かった。ダービーなどのこういった切迫した、とげとげしい雰囲気が、超新星を生み出すことは多い。
野球など他競技もそうだが、大阪、関西という環境は時に厳しい。しかしそれは間違いなくクラブ、選手を奮い立たせている。 周囲の熱意にもあふれ条件も整いつつある。 吹田だけでなく、改修中の長居球技場や建設中の京都スタジアムなど、素晴らしい箱も続々とできる。選手や関係者には恵まれた環境に甘えず、プロとして激しい戦いを見せ続けて欲しい。こういう流れが関東、そして国内中にもどんどん広がっていくことを願う。(文・山岡則夫)
●プロフィール
山岡則夫
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍やホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!オフィシャルページにて取材日記を不定期に更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。