では、どうすればいいのか。私はこうした場合、ぜひ、健康な歯への負担が少ない治療から始めてほしいとアドバイスしています。
歯の色を白くしたい場合、まずは通常のクリーニングがあります。実は着色からそれほど日にちがたっていないステインや汚れであれば、クリーニングだけでかなりきれいになり、「こんなに白くなるんですね」と、患者さんが満足してくれることがけっこうあります。当然、クリーニングだけですめば、治療費も安いです。
この治療で満足ができなかった場合、次の段階として薬を使って歯を白くするホワイトニング、さらにはダイレクトボンディングという方法があります。
ダイレクトボンディングは歯の表面に透明な合成樹脂である歯科専用プラスチックのコンポジットレジンを直接、塗りつける方法です。
必要に応じて塗り足していくため、型取りの必要がありません。前歯の隙間や欠けた部分も修復できます。
コンポジットレジンは色を選ぶこともできるので、自然の歯に非常に近い仕上がりになります。
これでも不満が残る場合にはじめて、ラミネートべニアやクラウンを検討するべきだと思います。
審美歯科の治療では最近、「歯並びをよくしたい」という人に対して、歯を削ってセラミックでかぶせる方法が登場しています。この治療では見た目をきれいに整えるために、かなり大きく歯を削らなければならない場合があります。また、歯並びの治療は噛み合わせとも深く関連するもので、噛み合わせを考えないまま、治療をしてしまうと、見た目がきれいでも、よく噛めない、顎が痛い、頭痛や肩こりなどの不定愁訴が起こる、などの症状が出てくる危険性があります。
歯並びの専門は矯正歯科であり、審美歯科ではありません。
また、歯科の専門が何科かにかかわらず、いい歯科医師は皆、できるだけ健康な歯をいじらずに、最大限の効果を得られるような治療を常に考えているものです。
審美歯科であれ、矯正歯科であれ、こういう考え方の歯科医師のもとで治療を受けてほしいと思います。
【出版記念講演会のお知らせ】
若林健史歯科医師の著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか?聞くに聞けない歯医者のギモン40』の出版記念講演会を6月12日(水)に浜離宮朝日ホール小ホールで開催します。申し込み方法は、コチラ。
応募締切6月2日(必着)
○若林健史(わかばやし・けんじ) 歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演