歯の色が黄ばんでいる。まわりと違って歯の色が悪いことに昔から悩んでいる……。そんな悩みにこたえるのが、ホワイトニングなど歯を白くする治療です。でも、こうした治療は健康な歯に悪影響はないのでしょうか? また、受ける場合はどんなことに注意すべきでしょうか? テレビなどでおなじみの歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。好評発売中の著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか? 聞くに聞けない歯医者のギモン40』からお届けします。
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歯の色が悪い原因はいくつかありますが、その一つは歯の表面につくステイン(着色汚れ)です。コーヒー、紅茶、赤ワイン、カレーなど色の濃い飲み物や食べ物をよく取っていると、色素がエナメル質の表面に沈着し、色が付きます。タバコのヤニも同様です。
もう一つ比較的多いのがテトラサイクリン系抗生物質など薬の副作用や全身性の病気により、エナメル質や象牙質に色がしみこんだものです。
ほかの原因は、加齢による黄ばみや変色で、どんな人にも起こります。複数の原因が合わさって起こっている場合もあります。
こうした治療を専門におこなっているのは、審美歯科です。歯や口元の美しさに焦点を当てた総合的な歯科治療とされています(私のクリニックにも専門の歯科医師による審美歯科部門があります)。
白い歯に憧れる人が増えてきたのは、それだけ年をとっても歯が残せるようになり、管理も行き届いている歯が増えてきた証拠で、とてもすばらしいことだと思います。むし歯や歯周病の治療を終えた後、こうした治療にトライするのもいいのではないでしょうか。美しい歯が手に入れば、笑顔も増えます。ますますご自分に自信が持てるようになるはずです。
しかし、治療を受けるにあたって、少しだけ注意してほしいことがあります。それは歯を白くする治療の中に、歯に少なからずダメージを与えるものがあるということです。
例えばラミネートべニアとクラウン(かぶせもの)を使う治療。いずれも歯(エナメル質)を削ってそこに人工の白い歯科材料であるラミネートべニアをつけたり、クラウンをかぶせたりする方法です。
いずれも、熟練した歯科医師の元で受ければ歯の色自体は満足のいくものになるでしょう。しかし、治療のために健康な歯を削ることは問題です。歯はできるだけいじらないほうが、長持ちします。削ってしまうと、将来、割れやすくなるなど、劣化が進みやすくなり、むし歯や歯周病になるリスクも高まります。