──具体的にどのような活動をしているのですか。



 私は、亜細亜大学で非常勤講師として異文化コミュニケーションを教えています。異文化コミュニケーションといっても、英国と日本の違いを教えているわけではありません。それは、つまらないですから(笑)。

 異文化とのコミュニケーションが必要とされるところは、もっと身近にあります。若者と高齢者、東京と地方、大学のキャンパス内と周囲の街ではどう違うのか。異文化は、自分の周囲にたくさんあるものです。

 学生たちが身近な異文化とコミュニケーションをすれば、自分自身のアイデンティティも客観的に認識できるようになります。それができてはじめて、外国人と日本人の違いも理解できるようになるのではないでしょうか。

 そこで、学生たちを中津川に連れて行き、おじいさんやおばあさんと交流し、中津川の未来を考えるプロジェクトを実施しています。

──都市と地方、若者とお年寄りなど、接したことのない人には「村」は異文化のかたまりかもしれませんね。

 そのとおりです。ポイントは、宿泊先はホテルではなく農家民宿にすること。自宅で熊の肉やヤマメの刺し身など地元の料理で食事を楽しみながら、村の歴史や文化を話す。そうすると、「昔は肥料集めてから学校に通っていた」といった昔話や、コミュニティを維持するための習慣や文化を学ぶこともできます。

 同じように、日本在住の外国人を連れて行ったこともあります。外資系企業の社員、ジャーナリスト、コンサルタントといった人たちと、家族と一緒に訪問する。そこで、中津川の未来を考えるワークショップも開催しました。

──参加者にはどのような反応がありましたか。

 外国人にとって、伝統的な神社や仏閣を訪ねるのも素晴らしい経験ですが、日本の村にある一軒の家を体験するのは、また違ったものです。どこか、親戚の家に帰ったような感覚になるんですよね。

 日本を観光で訪れる外国人は増えていますが、その人たちが求めているのは、こういった「心の癒やし」だと思います。都会で日々の生活に追われていると、心が傷つくこともあります。「禅」という文化が外国で人気があるのも、無意識に「癒やし」を求めているのではないでしょうか。


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村の中に日本の未来がある