日本では、割れたお椀を漆で接着して、金で飾る「金継ぎ」という修復技術があります。私は、村に行くことで「心の金継ぎ」ができるのでは、と考えています。



──最近では「村」という言葉が「閉鎖的」「排他的」という意味で使われ、経済合理性から村は消滅してもしょうがないという考え方もあります。

 たしかに、村には複雑な人間関係があります。厳しい自然や時代の変化に対応するためには、「相手を想う心」を持ちながら、支え合って生きていかなければなりません。そのなかで、コミュニティの利益を損なう可能性のある行動や態度が問題視されることもあるでしょう。

 ただ、知っておかなければならないのは、「相手を想う心」は、厳しい自然環境を生き抜くための現実的な考え方から生まれたということです。社会の変化、気候変動による災害にも、村の人たちは「相手を想う心」で対応してきました。

 だから、私のような外国人が訪ねても、村の人達は積極的に交流してくれます。お互いに学びがあり、新しい発見がある。東京に限らず、都会に住む人たちは、自らが持っている影響力をもっと地方のために活かしていくべきです。

──今後の活動はどのような活動を考えていますか。

 私も62歳になって、これからは衰えていくだけ(笑)。なので、体が動かなくなるまでに、別の地域に活動を広げたいですね。

 私たちは今こそ日本の村に立ち戻り、過去と現在を学び、新しい未来への道を見出さなければなりません。その歩みは楽しく、実りの多い道です。

 最近では「CSR(企業の社会的責任)」という言葉がよく使われていますが、私は、「CCR(企業の文化に対する責任)」というフランス発祥の新しいコンセプトに注目しています。日本の万華鏡のような文化を残すために、できることはたくさんあります。まずは日本にある英国企業に「もっと田舎に行こうよ」と呼びかけていきたいですね。

(聞き手/AERA dot.編集部・西岡千史)