1週間後、今度は一緒に眼鏡を選んで欲しいからとデートに誘われる。
「私はこのとき何かが弾けて、髪の毛を金髪にしました。やってみたいことの1つに金髪があって、うれしくて頭がパーになったのかも。『金髪にするなら今しかない!』と思って、有名な高級美容室で脱色して金色に染めて。めっちゃ気合い入ってましたね。実は彼も金髪で、会社員なのにビジネススーツで金髪、しかも似合ってなくて(笑)。お揃いにしたわけではないけれど、やってみようと」
眼鏡ショップの前で待ち合わせをし、彼はびっくりしたが、「似合うね!」と言ってくれた。そして、今日こそは年齢を言おうとエミさんは心に誓っていた。
「このまま年齢を言わないのはごまかすようだし、なぜ私が後ろめたい思いをしなければいけないのか。逃げるならさっさと逃げてもらったほうがいいと思って。眼鏡を選んだ後、食事をしながら言ったんです。『私は52歳です』って。そしたら、彼が“しゅー”ってのけぞったのがわかりました(笑)。ああ、せめて私が49歳で彼が35歳なら、十の位は1つしか違わないのに、52歳と38歳って。それはないでしょ、神様~って思いましたよ」
ここで終われば、失恋も武勇伝の1つにできる。終わりなら終わりでもいいと、清々しいような淋しいような複雑な気持だった。
12月の街はクリスマスのイルミネーションでキラキラしていた。
■1回1回のデートが楽しければいい
年が明けたら、何とまた彼から連絡があった。
「年齢がわかったのに連絡してきてくれて、うれしかったですよ。でも、この年齢でつき合うことになれば、もしかして私が期待して“結婚”を意識してしまうようなことになるかもしれない。そうなると、嫌われないようにしなきゃとか、相手を盛り上げなきゃって、かえって執着してギクシャクしてしまうかもしれないでしょ。だからこれからも、もし彼がデートに誘ってくれるなら、彼が楽しいかどうかは置いておいて、自分だけは楽しく幸せでいよう、1回1回のデートが楽しければそれでいいって考えるようにしたんです」