日本で開催されるフィギュアの大会は常に満席に (c)朝日新聞社
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 3月、世界フィギュアスケート選手権が開催されたさいたまスーパーアリーナは、連日観客でいっぱいになった。時には公式練習まで満席になる国は、世界でも日本だけではないだろうか。

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 世界選手権で女子シングルを制したのは、平昌五輪女王アリーナ・ザギトワ(ロシア)だった。ショートプログラムで首位に立ち記者会見に臨んだザギトワは、「日本の観客のみなさんはいつも温かく歓迎してくださるので、日本の試合に出場するたび本当に嬉しい」と日本のファンへの感謝を口にしている。また「あなたはここでロシアよりもサポートされていると思いますが、日本のファンの愛の表現に何か気づきましたか?」という質問には、次のように答えた。

「確かに、日本ではフィギュアスケートはとても愛されています。日本のみなさんは、例えば私が部屋から出てくるのを待ってくれていたりします。そういう時は、もちろんとても嬉しい。サインする時も、私は『落ち着いて』と言いながらサインしてあげています」

 秋田犬・マサルをかわいがり、オフには沖縄に行きたいというザギトワの日本への親近感は、日本のファンが示す「フィギュアスケート愛」から生まれているのだろう。

 ご存じのように、日本開催の国際試合では、演技が終わった時、観客席で広げられる国旗は日の丸だけではない。小国出身の選手の演技後も国旗がたくさん揺れているのを見ると、日本のファンの律儀さに頭が下がる。日本で行われる国際試合の記者会見では、必ずと言っていいほど海外スケーターが日本のファンに感謝を述べるのも、納得がいく光景だ。

 スポーツでは、時に過剰なナショナリズムが顔を出すことがある。しかし日本で行われるフィギュアスケートの国際大会の空気は、その真逆だと言っていい。日本人選手への応援はもちろん一際大きいが、そのライバルがいい演技を見せれば、惜しみない拍手が送られる。

 男子シングル・フリーで、観客を熱狂させた羽生結弦の後に滑走し、高難度の4回転を含むプログラムをクールに滑り切って金メダルを獲得したネイサン・チェン(アメリカ)は、記者会見で次のように話している。

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どこの国の選手にとっても“理想の空間”