■発酵が進むと乳酸菌だけが増えていく
これらの菌が発酵期間や漬物のpHなどによって増えたり減ったりして変化していく。発酵初期には発酵に関与しない、いろいろな微生物も増殖するが、発酵が進んで乳酸量が増えていくとこうした菌は減っていき、「乳酸菌」だけが増えていく。
乳酸菌によっては「ヘテロ乳酸発酵」といって、乳酸だけでなく酢酸やエタノール(いわゆるアルコール)、炭酸ガス、エステルなどを生成する。漬物に微妙な香味を与えるのに役に立っているそうだ。
さらに、からし菜、高菜、カブ、キャベツ、わさびなどには揮発性成分であるAllyl isothiocyanate (AIT)が含まれており、これが一般細菌の増殖を抑制し、かつ乳酸菌の増殖を促進し、漬物の熟成に寄与しているのだという。
漬物がどのくらい人間の健康に寄与するのかはわからない。しかし、だめになりやすい生野菜の腐敗を防止するのに乳酸菌は有用だ。野菜の有効成分を効果的に摂取できるということで、間接的に健康に寄与している可能性はある。
一方、漬物に使われる塩分の量は高血圧などの遠因になっている。漬物には一長一短あるということか。漬物の健康効果について、英語論文があるかと思って「ピクルスpickles」で検索したら、Picklesさんという方の書いた論文がやたら見つかった(笑)。
どうもこの領域については医学的な研究は不十分なようである。逆に言えば、研究する余地、そして価値は十分にあるということだ。