FA加入で注目を集めた銀仁朗と巨人・原監督 (c)朝日新聞社
FA加入で注目を集めた銀仁朗と巨人・原監督 (c)朝日新聞社

 開幕2戦目から6連勝を飾って勢い良く飛び出した原巨人。その後はやや足踏みも、11試合を終えた時点で7勝4敗と好スタートを切っている。

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 その原動力となっている一人は新戦力である不動の3番打者・丸佳浩であるが、その一方で同じくFAで加入した炭谷銀仁朗はここまで2試合に出場したのみ。スタメンマスクの数では6試合の小林誠司だけでなく、大城卓三の3試合よりも少ない数になっている。

 開幕前に炭谷自身のアピールが不足していた点が要因の一つではあるが、当初から3年総額6億円と言われる大金を投じて獲得することに対しては疑問の声があった。さらに炭谷の人的補償で生え抜きの功労者である内海哲也を奪われたことも、G党の中ではしこりとなっている。

 それでも炭谷の実力に疑いの余地はない。キャッチングの巧さ、冷静なリードに正確な送球といった守備能力は、現日本球界屈指だ。実際に移籍後初のスタメンマスクを被った3月30日の広島戦では、立ち上がりに制球が不安定だったヤングマンを、緩急を有効に使いながら巧みにリードし、田中広輔の盗塁も阻止して勝利に貢献した。

 4月4日の阪神戦ではドラフト1位ルーキー・高橋優貴とコンビを組み、プロ初登板初先発初勝利へと導いた。今後、巨人投手陣とのコンビネーションを高め、セ・リーグの野球に慣れてくれば、炭谷が不動の正捕手となっても全く不思議ではない。

 しかし、現状の“捕手併用”も決して悪いものではない。「正捕手不在」と聞けば不安になるが、肉体的だけでなく精神的にも過酷であるポジションなだけに、休養によって疲労を取り除いて頭もリフレッシュすることができるのは大きなメリットになる。

 また、捕手が変わればリードが変わり、投手のピッチングが変わる。連敗中などに先発捕手を変えてチーム全体の流れを変えることも有効な手段になるはずだ。3人を見ると、強肩が武器でエース・菅野智之との好相性が目立つ小林、強打が魅力でまだ26歳と若い大城、そして高い守備力で対パ・リーグ球団のノウハウも持つ炭谷と、それぞれの持ち味が異なる点もチームの戦い方を広げることに繋がる。

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「三本の矢」になってV奪回の力にも