2009年にリリースした『女々しくて』は2011年頃からじわじわと人気を呼び、いつしか大ヒットしてカラオケの定番曲となった。この楽曲をきっかけに彼らは世の中に知られるようになった。その後も、さまざまな企画やアイデアで人々を楽しませている。

 そんなゴールデンボンバーの成功を冷静な目で見つめていた男がいる。オリエンタルラジオの中田敦彦である。中田は、ゴールデンボンバーの革新性は「本物のミュージシャンが音楽番組であえて芸人のようなふざけたパフォーマンスをする」というところにあると考えた。

 そこで、彼らの方法論を自分たちに取り入れることにした。音楽とお笑いをひっくり返して、「本物の芸人がお笑い番組で真剣にミュージシャンのようなパフォーマンスをする」ということに可能性を感じたのだ。

 中田は相方の藤森慎吾と4人のダンサーを引き連れて、RADIO FISHという音楽ユニットを結成。ほかの芸人たちが漫才やコントを披露するネタ番組で、オリエンタルラジオだけは『Perfect Human』という楽曲を大真面目に歌い、踊った。それが話題になり、この曲は大ヒットした。ゴールデンボンバーが音楽の世界にお笑いを持ち込んだのと同じように、中田はお笑いの世界に音楽を持ち込んでみせたのだ。ゴールデンボンバーの成功の方程式は、逆向きにたどっても通用するものだったのだ。

 私はどちらかと言うと音楽よりもお笑いに興味があるタイプの人間だが、ゴールデンボンバーのことはずっと気になっていた。実際に彼らのライブに足を運んでみて感心したことがある。会場にいるすべての観客を楽しませようとする気遣いが感じられたのだ。

 彼らのような人気バンドになると、大勢の固定ファンがついていて、ライブではそんな常連たちの間で独自のノリが生まれやすい。だが、鬼龍院はテレビなどで自分たちに興味を持ち、初めてライブに来たような観客にも常に気を使うようなコメントをしていた。「次の曲ではこういう振り付けをしてください。でも、何もしなくてももちろんOKです」などと言ったりして、初心者を置き去りにしない配慮が感じられたのだ。

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キワモノに見られがちだが…