■世の中が無印良品のビジョンを消化している

 無印良品は50円の消しゴムから千数百万円もする家まで7000品目の商品を持つ、特殊なブランドです。別の見方をすれば、生活スタイルを売っているとも言えますし、常にそうしたスタイルの提案を運命づけられたブランドとも言えます。

 こうしたビジョンなどの理念的なものと業績の関係は、基本的には、にわとりが先か卵が先かの関係です。基本的には、どちらが先でも良い。にわとり(ビジョン)が先のタイプもあれば、卵(業績)が先のタイプもあります。卵(業績)が先タイプの典型は、たとえばアウトドアブランドのpatagoniaです。

 無印良品は、明らかに「にわとりが先」のタイプです。日本企業には珍しく、個人のビジョンから生まれた巨大ブランドなのです。

 業績の小さな下方修正は、マーケティング的な要因もあると思いますが、ブランドの揺らぎのサインと見ることもできます。

 というのも、ここ数年、無印良品のお店に行って個人的に感じるのが、衣料関係の魅力度が下がっていることです。あくまで私個人の感想なので、一般化はできませんが、以前は行けば2点3点と購入していた衣料を、ここ数年はほとんど買わなくなっています。なぜか食指が動かないのです。

 それと無印良品のお店に入って感じていた、ちょっとセンスのいい、工夫のある商品が、手に届きやすい値段で並んでいる、あ、こんなのもあるんだ!といった「無印ワールド」的なワクワク感が減ってきた感じがしています。5年前とは明らかに受ける印象が違います。

■ビジョンに合わせたビジネスのアップデート時期

 以前感じていた「無印ワールド」のワクワク感は、実は数多くあるファッション系雑貨や日用雑貨のお店の方に感じるようになっています。これは、無印良品が標榜していた「簡素の中にある美意識や豊かさ」が一般化されて、私たちの中の一定の美意識の基準として定着し始めたとも見ることもできます。世の中が無印良品のビジョンやコンセプトを消化し、無印良品に追いついてきた、と言えるかもしれません。

暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?
次のページ
ビジョンのチューニングの必要性とは?