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今年1月、無印良品を展開する良品計画は、業績を下方修正した。
海外事業は比較的好調なのだが、国内事業、特に生活雑貨カテゴリーが不振なうえに、冬物の製品の売り上げが伸び悩んだようだ。業績予想は通期で、営業収益4093億円(3.5%減)、営業利益470億円(6%減)、経常利益473億円(6%減)としている。
ここ何年も業績好調だった無印良品の、このちょっとした変化は何なのか。ビジョンなどの理念に関しては日本でも有数の企業である良品計画。ビジョンやコンセプトなどに詳しく、『THE VISION――あの企業が世界で急成長を遂げる理由』の著者でもある、ブランド戦略コンサルタントの江上隆夫さんに理念と業績の関係を読み解いてもらった。
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よく知られていることですが、無印良品は、1980年にスーパー・西友の40品目のPB(プライベート・ブランド)として産声を上げました。この誕生に関わったのが、いまは鬼籍に入られた西武グループの総帥・堤清二氏と、著名なグラフィック・デザイナー、アートディレクターであった故・田中一光氏です。
■2つの顔を持っていた西武セゾングループの総帥・堤清二
堤清二氏は、当時新進のコピーライターだった糸井重里氏などを起用しながら(他にも多くの優秀なクリエイターが関わっていました)、池袋にある地味で二流三流のイメージであった西武デパートを、日本有数のカルチャーの香りのする先端的な百貨店に変えていきました。
私は当時、駆け出しのコピーライターだったのですが、西武の広告の仕事は、クリエイターなら誰もが憧れるような、メジャーリーグのオールスター戦であり、いつかはたどり着きたいと思わせる華やかさと面白さに満ちていました。
しかし、堤氏が面白いのは、西武が、世界的な高級ブランドを華やかに展開する百貨店である一方で、実態的な価値とかけ離れて価格がつけられ、その名前だけで有難がられる“ブランド”と、その“ブランド”というビジネスの在り方そのものには疑問を抱いていたことです。