加熱式たばこや電子たばこが危険なのは、煙が出ない・見えにくいことや、健康リスクが少ないという誤解から、普通のたばこは吸えないような場所でも使われてしまう可能性があることです。例えば、私も妊娠中に、「加熱式たばこだから大丈夫」という間違った理由で目の前で加熱式たばこを喫煙されたことがあり、悲しい思いをしました。今月ハーバード大から発表された研究でも、その危険性が指摘されています。例えば、電子たばこを吸う人の場合、66.7%の人が家の中で紙巻きたばこを吸わないことにしていましたが、電子たばこについて同様のルールにしているのはわずか25.4%でした。

 たとえ目の前に子どもがいなくても、部屋の中や喫煙者の体に有害物質が残留し、結果的に子どもや他の非喫煙者にたばこの害が及ぶこともわかっています。これが、「残留受動喫煙(三次喫煙)」というものです。2004年にサンディエゴ州立大学から発表された論文では、子どもの目の前で親が喫煙していなくても、子どもの尿中のニコチン濃度は、喫煙者のいない家庭と比べて8倍になっていることがわかりました。

 さらにアメリカでは、妊婦さんや中高生にも電子たばこの使用が広がっています。アメリカ疾病管理予防センターがオクラホマ州とテキサス州で行った2015年の調査では、14人に1人の女性が妊娠中、またはその前後に電子たばこを吸っていたことがわかっています。アメリカの中高生の間でも、紙巻きたばこの喫煙が減っていたにも関わらず、電子たばこの使用が増えたため、たばこ使用率が上昇傾向となっています。

 加熱式たばこや電子たばこは普通の紙巻きたばこより軽く考えられがちですが、健康への影響がないわけでは決してありません。普通のたばこと同じように健康に悪影響があると理解して、そもそも喫煙するかどうか、また喫煙するとしたら、その場所は喫煙してよい場所なのかどうか、判断していただきたいと思います。

◯森田麻里子(もりた・まりこ)
1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

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