日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は、加熱式たばこ・電子たばこの子どもへの危険性について森田麻里子医師が「医見」します。
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ここ数年でかなり一般的になってきた加熱式たばこや電子たばこ。普通のたばこと違って受動喫煙のリスクがない、健康への悪影響が少ない、禁煙につながる、と思っている方も、いらっしゃるかもしれません。しかし実は、それは大きな誤解です。今回は、加熱式たばこ・電子たばこの危険性と、それに関連してリスクが高まる残留受動喫煙について解説したいと思います。
たばこは子どもの健康にも大きな悪影響を及ぼします。例えば、妊娠中のママがたばこを吸っていると、胎児の発育が阻害されます。そして産まれた赤ちゃんの乳幼児突然死症候群のリスクは、オッズ比にして2倍以上になります。アメリカの乳幼児突然死症候群のケースのうち、22%はたばこが原因であると推定されているのです。また、喘息のある子が受動喫煙にさらされていると、入院するリスクがオッズ比にして2倍になります。また、親の喫煙が子どもの白血病のリスクを上昇させる可能性も指摘されています。
加熱式たばこは、葉たばこを加熱することで、ニコチンを含んだ蒸気を発生させる仕組みです。確かに、たばこの3大有害物質「ニコチン」「タール」「一酸化炭素」のうち、タールと一酸化炭素については、紙巻きたばこより低減されることがわかっています。しかし、ニコチンの量はほとんど変わりません。また、日本で販売されている電子たばこは、ニコチンを含まないフレーバーのついた液を加熱し、蒸気を発生させます。このような電子たばこにおいても、鉛・クロム・ニッケルなどの重金属やホルムアルデヒドの量は、紙巻きたばこより多い製品もあることが、世界保健機関(WHO)の報告書でも明記されています。加熱式たばこや電子たばこが健康にどのような影響を与えるのかは、長期間経ってはじめてわかってくるものです。いまの状態は、壮大な「実験」が行われているといっても過言ではありません。